一人暮らしをしていたご家族が亡くなり、発見までに時間がかかってしまった。警察から部屋の引き渡しを受けたものの、においや汚れが強く、自分たちでは片付けられない——そうした状況で「特殊清掃」という言葉を初めて知る方は少なくありません。
結論から言うと、特殊清掃の費用には国が示す公定の料金や公的な相場データがなく、汚染の範囲や発見までの期間、間取り、荷物の量によって見積もりごとに決まります。だからこそ、金額の大小より先に「見積書の内訳」を確かめることが、納得できる依頼への近道です。
あわせて、費用を誰が負担するのか、相続放棄を考えているときに何をしてはいけないのか、清掃後にその家を売るとき何を告げる必要があるのかも、順番に整理しておきましょう。
この記事を読むとわかること
- 特殊清掃で行う作業と、遺品整理・原状回復との違い
- 特殊清掃の費用が何で決まるか、見積書のどこを見ればよいか
- 費用を負担するのは誰か(相続人・相続放棄・賃貸の場合)
- 特殊清掃をした家を売るときの告知のルール
- リフォームしてから売るか、現況のまま買取に出すかの考え方
この記事の結論忙しい方はここだけ
- 特殊清掃は、孤独死などがあった住居で原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービスです。荷物の仕分け・搬出(遺品整理)や内装の張り替え(リフォーム)とは別の作業として見積もられることが多くなります。
- 費用は汚染の範囲・発見までの期間・間取り・荷物量・搬出条件で決まります。「一式」だけの見積書は避け、作業ごとの内訳と追加料金の条件を書面で確認してください。
- 持ち家なら費用を負担するのは原則として相続人です。相続放棄を考えている場合は、亡くなったことを知った時から3か月以内に判断する必要があり、遺品の処分や相続財産からの支払いは慎重に行います。
- 国土交通省のガイドラインでは、自然死でも特殊清掃等が行われた場合は告知の対象になります。賃貸には「概ね3年」の目安がありますが、売買には期間の目安が示されていません。
- 売却は「清掃・リフォーム後に仲介で売る」か「現況のまま買取に出す」かの選択です。リフォーム費用と売却価格の差、手放すまでの期間で比べましょう。
特殊清掃とは|遺品整理・原状回復との違い
特殊清掃は、孤独死などが発生した住居で原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービスです。遺品の仕分け・搬出や内装工事とは役割が異なります。
国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」は、特殊清掃を「孤独死などが発生した住居において、原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービス」と説明しています(総務省行政評価局の調査報告書の定義を引用)。
実際の現場では、清掃だけで終わることは少なく、遺品整理やリフォームが続けて必要になることがよくあります。費用を正しく比べるために、まずそれぞれの作業の範囲を分けて考えましょう。
特殊清掃で行う主な作業
特殊清掃の中心は、においと衛生の問題を取り除く作業です。業者の見積もりには、一般的に次のような作業が並びます。
- 汚染物(寝具・衣類・畳など)の除去と梱包
- 床や壁など汚染箇所の清掃・消毒
- 消臭作業(薬剤や専用機器を使った脱臭)
- 害虫の駆除
- 汚染が深い場合の床材などの撤去
どこまでを「特殊清掃」に含めるかは業者によって異なります。同じ作業名でも範囲が違うことがあるため、見積もりの段階で作業内容を一つずつ確認することが大切です。
遺品整理との違いは「区分」と「搬出」
総務省の調査では、遺品整理サービスを、遺品を手元に残すものと不用なものに分ける「区分」と、それを故人宅から運び出す「搬出」の2つの業務に整理しています。特殊清掃が部屋そのものを衛生的に戻す作業であるのに対し、遺品整理は荷物を仕分けて運び出す作業です。
同じ報告書は、遺品整理サービスには「業法」がないことも指摘しています。特殊清掃と遺品整理を一括で請け負う業者もあれば、片方だけを扱う業者もあります。
原状回復・リフォームとの違い
汚染が床下や壁の内側まで達していると、清掃だけでは部屋を元に戻せず、床材や壁紙の張り替えなどの内装工事が必要になります。これは清掃業ではなくリフォーム工事の領域で、別の見積もりになるのが通常です。
賃貸住宅では、国土交通省のガイドラインが原状回復を「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。借りた当時の状態に戻すことではない、という点がポイントです。
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| 作業 | 目的 | 主な内容 | 見積もりの単位の例 |
|---|---|---|---|
| 特殊清掃 | 衛生とにおいの回復 | 汚染物の除去、消毒、消臭、害虫駆除 | 作業項目ごと・日数ごと |
| 遺品整理 | 荷物の仕分けと搬出 | 残す物と不用な物の区分、搬出、廃棄物処理 | 作業人数・車両・廃棄物の量 |
| リフォーム(原状回復工事) | 内装・設備の復旧 | 床材・壁紙・建具などの撤去と張り替え | 面積・部位ごと |
※作業の呼び方や範囲は業者によって異なります。見積書で実際の作業内容を確認してください。
- 引き渡し警察などの対応が終わり部屋に入れる状態に
- 特殊清掃汚染物の除去・消毒・消臭
- 遺品整理残す物の区分と不用品の搬出
- リフォーム汚染が深い場合の内装復旧
- 売却・活用告知を前提に売り方を選ぶ
特殊清掃の費用は何で決まるか|見積もりの内訳
特殊清掃の費用は、汚染の範囲や間取り、荷物の量などから現場ごとに積み上げて決まるため、一律の相場では判断できません。見積書の内訳で比べるのが基本です。
「特殊清掃の費用はいくらか」と調べると、民間のサイトでさまざまな金額の目安が見つかります。ただ、それらは各社の経験に基づく数字であり、条件が違えば当てはまりません。この記事では、金額そのものではなく、金額が何で決まるのかを整理します。
公定の料金はなく、見積もりごとに決まる
総務省の調査報告書は、遺品整理サービスについて「料金について、公定や公認の仕組みは存在しない」としたうえで、依頼者の事情に応じて契約ごとに料金が決まると述べています。本記事の執筆時点で、特殊清掃の費用について国や公的機関がまとめた相場データは確認できませんでした。
参考として、同じ報告書が集めた遺品整理の見積書75例では、10万円から40万円の間の取引が多かったとされています。ただし統計的な抽出ではなく、遺品整理サービスの見積もりであって特殊清掃の費用を示すものではない点に注意が必要です。
金額を左右する6つの要素
見積もりの金額は、主に次の要素の組み合わせで決まります。業者に問い合わせるときにこれらを伝えられると、概算の精度が上がります。
- 汚染の範囲:一部屋の一部か、床下や隣室まで及んでいるか
- 発見までの期間と季節:時間がたつほど汚染やにおいが広がりやすい
- 間取り・面積:作業する範囲が広いほど人手と時間がかかる
- 荷物の量:汚染物や遺品が多いほど搬出・処分費が増える
- 搬出条件:階数、エレベーターの有無、車両を止められる場所
- リフォームの要否:床材や壁の撤去が必要かどうか
総務省の調査でも、見積もりの際に業者が依頼者の意向や搬出する家財の量に加え、トラックの駐車場所やエレベーターの有無といった立地条件を確認している例が紹介されています。
見積書に並ぶ項目と確認ポイント
特殊清掃と遺品整理をまとめて依頼する場合、見積書には次のような項目が並びます。遺品整理の見積書について総務省は、整理・搬出作業、廃棄物の処理、買取り代金、車両費などを計上する欄が設けられているのが一般的だとしています。
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| 区分 | 主な項目 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 特殊清掃 | 汚染物の除去、清掃・消毒、消臭、害虫駆除 | 消臭の方法と日数、においが残った場合の対応 |
| 遺品整理 | 仕分け・梱包、搬出の人件費、車両費 | 作業人数と日数、立会いの要否 |
| 廃棄物処理 | 不用品・汚染物の処分費 | 誰が運搬するか(許可の有無) |
| 買取り | 家財・家電などの買取り代金 | 総額から差し引かれているか |
| 工事 | 床材・壁紙などの撤去と張り替え | 清掃と別見積もりか、範囲はどこまでか |
※項目名や区分の仕方は業者によって異なります。
総務省の調査では、諸項目を積算する見積もりがある一方、「○○一式」として内訳が不明なものもあったと報告されています。一式表記では、何が含まれていないのかが分かりません。
- 特殊清掃の費用に公的な相場はなく、現場の条件で決まる
- 汚染の範囲・期間・間取り・荷物量・搬出条件・工事の要否が主な要素
- 見積書は「一式」ではなく項目ごとの内訳で比べる
見積もりの取り方と依頼先の選び方
複数社から内訳の分かる見積もりを取り、作業範囲・追加料金・キャンセル料を書面で確認してから契約します。廃棄物を誰が運ぶのかも確かめましょう。
突然のことで気持ちの整理がつかないまま、急いで業者を決めなければならない場面も多いはずです。ただ、急ぐときほどトラブルが起きやすいため、最低限の確認だけは省かないようにしてください。
依頼から作業完了までの流れ
- 状況を確認する部屋の引き渡し時期、建物が持ち家か賃貸か、管理会社や管理組合への連絡の要否を確認します。
- 相続放棄の可能性を検討する放棄を考えているなら、遺品の処分に手を付ける前に専門家へ相談します(後述)。
- 複数社に現地見積もりを依頼する汚染の範囲や荷物量は現地で見ないと分からないため、訪問見積もりで比べます。
- 残す物を決めて契約する貴重品や思い出の品を明示し、作業内容と料金を書面で確認してから契約します。
- 作業・完了確認においや汚れが残っていないか確認し、作業前後の写真があれば受け取ります。
汚れた箇所には衛生面の心配があるため、ご遺族がご自身で清掃や片付けを始めるより、まず業者に現地を見てもらうのが一般的です。貴重品など急いで取り出したい物があるときは、見積もりの際に相談しましょう。
複数社の見積もり・契約書・追加料金
国民生活センターは遺品整理サービスについて、複数社から見積もりを取ること、見積書の内容を十分に確認すること、料金やキャンセル料・作業内容を事前に確認すること、残す遺品と処分する遺品を明確に分けておくことを呼びかけています(総務省の報告書が引用)。特殊清掃でも同じ確認がそのまま役立ちます。
- 見積書が項目ごとの内訳になっているか
- 契約書を取り交わすか(総務省の調査では69事業者中43事業者)
- 見積もりの範囲外の作業が出たときの追加料金の扱い
- キャンセル料の有無と金額
- 残す遺品の指定方法と、立会いの要否
総務省の報告書には、見積もりの範囲外の作業が出たときの対応は事業者によって異なり、契約の範囲をめぐる食い違いがトラブルの要因の一つと考えられる、とする記述もあります。口頭の説明だけで済ませないことが大切です。
廃棄物の運搬には市町村の許可が必要
廃棄物処理法第7条は、一般廃棄物の収集・運搬を業として行う者に市町村長の許可を求めています。総務省の調査も、遺品を区分した結果、廃棄物になった物を搬出するときは市町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が必要だと整理しています。
許可を持たない業者は、許可業者に処理を依頼するなどの方法をとっており、その場合は料金が割高になりやすいとも報告されています。見積もりの際には、廃棄物をどの業者が運び、どこで処分するのかを確認しましょう。
依頼先を選ぶときの3つの確認
- 内訳の分かる見積書と、契約書を出してもらえるか
- 追加料金・キャンセル料の条件が書面にあるか
- 廃棄物の運搬を誰が行うか(許可の有無)
特殊清掃の費用は誰が負担するのか
故人の持ち家であれば、家を引き継ぐ相続人が負担するのが原則です。相続人が複数いれば話し合いで分担を決め、賃貸住宅では貸主との間で精算が問題になります。
民法第896条により、相続人は相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。家そのものが相続財産になるため、その家の清掃や片付けも、実務上は家を引き継ぐ相続人の手で進めることになります。
持ち家なら原則として相続人
相続人が複数いる場合、遺産分割が終わるまで相続財産は相続人全員の共有になります(民法第898条)。清掃や片付けの方針も、相続人の間で共有しておくのがトラブルを防ぐ第一歩です。
なお、民法第885条は「相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する」と定めています。ただし、故人の預貯金などから費用を支払うことは、相続放棄を考えている場合には注意が必要です(次の章で説明します)。
相続人が複数いるときの分け方
分担の決め方に決まった形はなく、相続人の話し合いで決めます。目安として法定相続分(民法第900条)で按分する方法や、家を相続する人が負担して売却代金から精算する方法があります。
清掃・片付けの見積もりが合計90万円、相続人が子2人の場合
- 前提:配偶者はおらず、相続人は子2人。法定相続分は各2分の1
- 法定相続分で按分すると:90万円 × 1/2 = 1人45万円
- 家を長男が相続して売却する場合:長男が90万円を立て替え、売却代金から精算する方法もある
金額は計算のための仮の数字です。どの方法をとるかは相続人の合意で決め、立て替えた場合は領収書を保管しておきましょう。
共有のまま家を売る場合の進め方は、相続で共有名義になった不動産の売却方法で詳しく解説しています。
賃貸住宅で亡くなった場合
故人が賃貸住宅に住んでいた場合、賃借人としての権利義務も相続の対象になり、退去時の原状回復の費用負担を貸主と話し合うことになります。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、経年変化や通常の使用による損耗の修繕費用は賃料に含まれるという考え方を示しています。
どこまでを誰が負担するかは、契約内容や個別の事情によって変わります。請求の内容に疑問があるときは、内訳を示してもらったうえで、弁護士や自治体の相談窓口に相談しましょう。
特殊清掃が必要になった家、今の状態でいくらになるか知っていますか?
持ち続けるか、手放すか。判断の前提になるのは「現在の価格」です。
売却するか決めていなくても大丈夫です。
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相続放棄を考えているときの注意点
相続放棄は亡くなったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。それまでに遺品を処分したり相続財産から支払ったりすると、放棄できなくなるおそれがあります。
故人に借金がある、家の価値より片付けの負担が大きいなどの理由で、相続放棄を検討する方もいるでしょう。特殊清掃の依頼と相続放棄の判断は時期が重なりやすいため、順番を間違えないことが重要です。
判断の期限は「知った時から3か月」
民法第915条は、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・放棄のいずれかをしなければならないと定めています。裁判所の案内では、申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で、費用は申述人1人につき収入印紙800円分とされています。
- 相続の開始を知る亡くなったこと、自分が相続人になったことを知った時が起点
- 財産と負債を調べる民法第915条2項により、承認・放棄の前に相続財産を調査できる
- 3か月以内に申述判断材料が足りなければ、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられる
3か月以内に放棄も限定承認もしなかった場合、民法第921条により単純承認したものとみなされます。調査が間に合わないときは、期限内に伸長の申立てをすることが大切です。
遺品の処分や相続財産からの支払いに注意
民法第921条は、相続人が相続財産の全部または一部を「処分」したときも単純承認したものとみなすと定めています。ただし、保存行為は除かれています。どこまでが保存行為に当たるかは事案ごとの判断になるため、自己判断は禁物です。
相続放棄の可能性がある段階で、遺品を売却・廃棄したり、故人の預貯金から清掃費用を支払ったりすると、「処分」に当たると判断されるおそれがあります。作業を急ぐ必要がある場合でも、先に弁護士や司法書士に相談し、支払いは自分の財産から行うなど慎重に進めてください。
放棄しても管理が残るケース
相続放棄をした人は、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法第939条)。ただし民法第940条により、放棄の時に相続財産を現に占有しているときは、次の相続人や相続財産の清算人に引き渡すまで、自己の財産と同一の注意をもって保存しなければなりません。
故人と同居していた場合などは、放棄後も家の管理が問題になることがあります。義務の範囲や手放すまでの費用は、相続放棄した空き家の管理義務と費用で解説しています。
- 相続放棄の期限は、相続の開始を知った時から3か月
- 遺品の処分や相続財産からの支払いは、単純承認とみなされるおそれ
- 放棄しても、現に占有していれば保存義務が残る
保険と税金で確認しておくこと
保険で費用を賄えるかは契約内容次第なので、まず保険証券を確認します。税金面では、特殊清掃の費用が売却時の経費になるとは限らない点に注意が必要です。
特殊清掃やリフォームの費用は、相続人にとって予定外の出費です。少しでも負担を軽くするために、保険と税金の両面から確認しておきましょう。
保険は契約内容と特約を確認する
故人が加入していた火災保険や、賃貸住宅の入居時に加入する保険、貸主側が加入している保険など、関係する保険は立場によって異なります。補償の範囲は保険の種類や特約によって大きく変わるため、一般論では判断できません。
- 故人名義の保険証券・契約内容のお知らせを探す
- 建物・家財のどちらが補償対象か、特約の有無を確認する
- 保険会社や代理店に、事故の経緯を伝えて対象になるか照会する
- 請求に必要な書類(見積書・写真など)を業者に依頼しておく
作業を始めてからでは被害の状況を示せなくなることもあるため、保険の照会は作業前に行うのが安全です。
清掃費用は売却時の「譲渡費用」になるか
家を売って利益が出ると譲渡所得に税金がかかります。国税庁のタックスアンサーNo.3255によると、譲渡費用は土地や建物を売るために直接かかった費用で、仲介手数料や売主が負担した印紙税などが該当します。
一方で、修繕費や固定資産税など、資産の維持や管理のためにかかった費用は譲渡費用にならないとされています。特殊清掃やリフォームの費用が差し引けるかは個別の判断になるため、領収書を保管したうえで税理士や税務署に確認してください。
相続した空き家なら3,000万円控除も確認
国税庁のタックスアンサーNo.3306によると、相続した被相続人の居住用家屋とその敷地を令和9年12月31日までに売り、一定の要件に当てはまれば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。
対象は昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、区分所有建物(マンションなど)は対象外です。相続の開始の直前に被相続人以外に住んでいた人がいなかったことも要件で、相続人が3人以上の場合は2,000万円までになります。要件の詳細は相続空き家の3,000万円特別控除の記事で確認できます。
特殊清掃をした家の告知のルール
国土交通省のガイドラインでは、自然死であっても特殊清掃等が行われた場合は告知の対象になります。売買では告知が不要になる期間の目安は示されていません。
特殊清掃が終わったあと、家を売るか貸すかを考える段階で問題になるのが「告知」です。国土交通省は2021年10月に、宅地建物取引業者が人の死をどう告げるべきかの判断基準をガイドラインとしてまとめました。
自然死でも特殊清掃をすれば告知の対象
ガイドラインでは、老衰や持病による病死などの自然死や、転倒・誤嚥など日常生活の中での不慮の死は、原則として告げなくてもよいとされています。ただし例外があり、長期間人知れず放置されたことなどに伴い、特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合は、買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性があるとして告知の対象になります。
建物の構造や設備に欠陥はなくても、過去の出来事などから買主・借主が心理的な抵抗を感じる事情のことです。ガイドラインはその評価が事案の内容や物件の特性によって異なるとしています。
売買には「3年」の目安がない
賃貸借取引については、特殊清掃等が行われることとなった死が発覚してから概ね3年が経過した後は、原則として借主に告げなくてもよいとされています。一方、売買取引にはこの期間の定めがありません。
| ケース | 賃貸 | 売買 |
|---|---|---|
| 自然死・日常の不慮の死(特殊清掃なし) | 原則告知不要 | 原則告知不要 |
| 特殊清掃等が行われた場合 | 発覚から概ね3年は告知 | 期間の目安なし |
| 相手から聞かれた場合 | 期間・死因に関わらず告知 | 期間・死因に関わらず告知 |
※国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)をもとに作成。事件性・周知性・社会的影響が特に高い事案は扱いが異なります。
宅地建物取引業法第47条は、業者が取引の相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げないことなどを禁じています。また売主自身も、事実を伏せて売ると後で民法上の責任を問われるおそれがあります。
告げる内容と、告げなくてよい内容
告知する場合、業者が買主に伝えるのは、事案の発生時期(特殊清掃等が行われた場合は発覚時期)、場所、死因(不明ならその旨)、特殊清掃等が行われた旨です。媒介する業者は、売主に告知書(物件状況等報告書)への記載を求める方法で調査します。
一方で、ガイドラインは亡くなった方や遺族の名誉と生活の平穏に配慮し、氏名・年齢・家族構成や具体的な死の態様、発見状況などは告げる必要がないとしています。
特殊清掃をした家を売るときは、告知書に事実をありのまま記載することが、売主自身を守る最も確実な方法です。故人の詳しい状況まで伝える必要はありません。
特殊清掃後の家を売る方法|リフォームか現況買取か
選択肢は「清掃・リフォームをしてから仲介で売る」か「現況のまま買取に出す」かです。リフォーム費用を上回って売却価格が上がるかと、手放すまでの期間で比べます。
特殊清掃をした家でも売却はできます。ただし告知が前提になるため、買主の受け止め方によっては売却期間が延びたり、価格交渉が入ったりすることがあります。売り方ごとの特徴を押さえておきましょう。
清掃・リフォーム後に仲介で売る
仲介は、不動産会社を通じて一般の買主を探す方法です。内装を整えれば見た目の印象は良くなりますが、リフォーム費用を先に負担する必要があり、その費用がそのまま売却価格に上乗せできるとは限りません。
また、売り方に関わらず売主の責任にも注意が必要です。民法第562条以下の契約不適合責任により、引き渡した物件が契約の内容に適合しないときは、買主から修補や代金の減額などを求められることがあります。
現況のまま買取に出す
買取は、不動産会社が直接買主になる方法です。リフォームをせずに現況のまま引き渡せることが多く、買主を探す期間がかからない分、早く手放せます。一方で、価格は仲介で売れる見込み額より低くなるのが一般的です。
現況買取のメリット
- リフォーム費用を先に出さずに済む
- 買主探しの期間がかからず、早く手放せる
- 買主が業者なので、告知の内容を理解したうえで取引しやすい
現況買取のデメリット
- 仲介で売れる見込み額より価格が低くなりやすい
- 会社によって買取価格の差が大きい
- 1社だけの提示額では高いか安いか判断できない
手残りと期間で比べる
どちらが有利かは、売却価格から先にかかる費用を差し引いた「手残り」で比べます。数字を置いてみると、判断の軸がはっきりします。
リフォーム後の仲介と現況買取を手残りで比べる場合(仮の数字)
- A:リフォーム費用200万円をかけて、仲介で1,800万円で売れた場合 → 1,800万円 − 200万円 = 1,600万円
- B:現況のまま1,500万円で買取に出した場合 → 1,500万円
- 差は100万円。ただしAは売れるまでの期間の固定資産税・管理費がかかり、値下げが入れば差は縮む
仲介手数料などの売却費用は双方で異なるため、実際には見積もりと査定額をそろえて比べてください。仲介で1,700万円しか付かなければ手残りは同じ1,500万円になり、仲介手数料を差し引くと逆転します。
空き家として持ち続ける間にも、固定資産税や管理の手間はかかり続けます。持ち続ける場合の費用感は空き家の管理費用は年間いくら?で整理しています。
売り方を決める前にそろえる数字
- リフォーム後に仲介で売る場合の査定額と、リフォームの見積額
- 現況のまま買取に出す場合の提示額(複数社)
- 売れるまでの期間に払い続ける税金・管理費
よくある質問
相続放棄をすれば、特殊清掃の費用は払わなくてよいですか?
相続放棄をすると初めから相続人でなかったものとみなされますが、放棄の時に家を現に占有していれば保存義務が残ります。また、放棄前に遺品を処分したり相続財産から費用を払ったりすると、単純承認とみなされるおそれがあります。放棄を考えているなら、作業前に専門家へ相談してください。
特殊清掃をした家は、何年たてば告知しなくてよいですか?
国土交通省のガイドラインでは、賃貸は特殊清掃等が行われることとなった死の発覚から概ね3年が目安です。一方、売買には期間の目安が示されていません。また、期間に関わらず買主・借主から問われた場合は告げる必要があります。
特殊清掃の費用は、家を売ったときの経費として差し引けますか?
国税庁は、譲渡費用を土地や建物を売るために直接かかった費用とし、修繕費など維持・管理のための費用は含まれないとしています。特殊清掃やリフォームの費用が該当するかは個別の判断になるため、領収書を保管し、税理士や税務署に確認してください。
自然死で発見が早く、特殊清掃をしなかった場合も告知が必要ですか?
ガイドラインでは、自然死や日常生活の中での不慮の死は、特殊清掃等が行われていなければ原則として告げなくてもよいとされています。ただし、買主・借主から事案の有無を問われた場合などは告げる必要があります。判断に迷う場合は、告知書に記載するかどうかを媒介する不動産会社と相談してください。
この記事のまとめ
- 特殊清掃は消臭・消毒などで部屋を衛生的に戻す作業で、遺品整理やリフォームとは別に見積もられることが多い
- 費用に公的な相場はなく、汚染の範囲・期間・間取り・荷物量・搬出条件で決まる。内訳で比べる
- 持ち家なら原則として相続人が負担。相続放棄を考えるなら3か月の期限と「処分」に注意
- 保険は契約内容を作業前に照会し、清掃費が譲渡費用になるかは税理士等に確認する
- 特殊清掃をした家は告知の対象。売買には期間の目安がないため、告知書に事実を記載する
- 売り方はリフォーム後の仲介と現況買取を、手残りと期間で比べて決める
特殊清掃の後に家をどうするかは、急いで決める必要はありません。まずは現況のままでいくらになるのかを知ることから始めてください。