「家を売っても、そのまま住み続けられる」という説明に惹かれてリースバックを検討しているものの、ネットで「失敗した」「後悔した」という声を見て不安になっている方は多いはずです。親がリースバックの契約をしてしまい、内容を確かめたいという家族の方もいるでしょう。
結論から言うと、リースバックの失敗は家賃・賃貸借の種類・売却価格・買戻し条件・契約手続きの5つにほぼ集約されます。どれも契約書にサインする前に確認すれば避けられるものです。
この記事では、国土交通省の「住宅のリースバックに関するガイドブック」と国民生活センターに寄せられた相談事例をもとに、よくある失敗パターンと、その回避策を整理します。
この記事を読むとわかること
- リースバックの相談が増えている背景と、失敗が起きる仕組み
- 家賃・定期借家・売却価格・買戻しで起きやすい5つの失敗パターン
- 修繕・原状回復など、契約後に見落としがちな負担
- 契約前に確認すべきチェックリストと、リースバック以外の選択肢
- 契約してしまった後に相談できる窓口
この記事の結論忙しい方はここだけ
- リースバックの相談は2019年度の24件から2024年度は239件に増え、契約当事者の約7割が70歳以上です。
- 家賃を払い続ける限り住める契約なので、売却代金2,000万円・家賃月20万円なら約8年4か月で売却代金と同額を払うことになります。
- リースバックでは定期借家契約が多く、期間満了後に住み続けられるかは貸主との再契約の合意次第です。
- 事業者の半数が買取価格を周辺相場の7割以下と回答しています。複数社の査定で相場を確認してから判断してください。
- 自宅を不動産業者に売った場合はクーリング・オフができません。家族と相談するまで署名しないことが最大の回避策です。
リースバックの失敗が増えている背景と仕組み
リースバックの相談は年々増えており、契約当事者の多くは高齢者です。失敗の根本には、売買と賃貸借という2つの契約を同時に結ぶ複雑さがあります。
リースバックは、自宅を売ってまとまった資金を受け取り、売った後も家賃を払って同じ家に住み続ける取引です。テレビCMなどで知る機会が増えた一方で、仕組みを十分に理解しないまま契約してしまうトラブルも目立つようになりました。
自宅を事業者に売却し、その事業者と賃貸借契約を結んで住み続ける取引のこと。「セール・アンド・リースバック」と呼ばれることもあります。売った時点で家の所有者は事業者になり、自分は借主(賃借人)になります。
相談件数は5年で約10倍、当事者の約7割が70歳以上
国民生活センターによると、全国の消費生活センター等に寄せられた住宅のリースバックに関する相談は、2019年度の24件から2024年度は239件まで増えています。2024年度の契約当事者は80歳代が41.4%、70歳代が26.8%で、70歳以上が約7割を占めます。
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2019年度 | 24件 |
| 2020年度 | 56件 |
| 2021年度 | 85件 |
| 2022年度 | 129件 |
| 2023年度 | 234件 |
| 2024年度 | 239件 |
※出典:国民生活センター「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!」(2025年5月21日)。PIO-NETに登録された相談件数(2025年3月31日までの登録分)。
認知度の低さも背景にあります。国土交通省が令和3年度に行った消費者アンケートでは、リースバックを「初めて聞いた」人が66.2%、仕組みを知っている人は12.8%にとどまりました。よく知らない取引を、訪問や電話の勧誘でその場で決めてしまうことが失敗の入り口になっています。
「売買」と「賃貸借」の2つの契約がセットになっている
リースバックが失敗しやすいのは、不動産売買契約と建物賃貸借契約を同時に結ぶからです。売買の条件(価格・違約金・買戻し)と、賃貸借の条件(家賃・期間・更新)の両方を理解しないと、後から「こんなはずではなかった」となります。
- 自宅を事業者に売却売買契約。所有権は事業者へ
- 売却代金を一括で受け取るここから家賃を払う人が多い
- 賃貸借契約で住み続ける毎月の家賃が発生
- 期間満了・家賃滞納で退去「ずっと住める」保証はない
国民生活センターも、住宅のリースバックの仕組み図に「そのままずっと住み続けられる保証はない」と注記しています。
失敗パターン1:家賃負担が重く払えなくなる
家賃は住む限り払い続けるため、長く住むほど総額は売却代金に近づきます。「売却で受け取る額」と「住む期間の家賃総額」を契約前に必ず比べることが回避策です。
リースバックで最も深刻なのが、家賃を払えなくなって退去を迫られるパターンです。
家賃の総額が数年で売却代金を超える
国土交通省のガイドブックには、自宅マンションを約2,000万円で売却し、家賃約20万円で住み続ける契約をした後、10年住むと家賃の合計が売却代金を上回ることに気づいたというトラブル事例が載っています。
2,000万円で売却し、家賃月20万円で住み続けた場合
- 年間の家賃:20万円 × 12か月 = 240万円
- 売却代金と同額になるまで:2,000万円 ÷ 20万円 = 100か月
- → 約8年4か月で、受け取った2,000万円をすべて家賃として払い終える計算
売却代金を生活費にも使えば、底を突くのはさらに早くなります。自分の家賃と売却額を当てはめて、何年で同額になるかを計算してください。
契約後に家賃が値上げされる
国民生活センターには、約1,600万円で自宅を売却し、家賃約6万円で住み始めたところ、3年後に家賃が約11万円になったという相談が寄せられています。事業者からは「3年経過後に家賃が上がることは契約時に説明している」と言われました。
建物の家賃は、税負担や近隣相場の変化などで不相当になれば、借地借家法32条により貸主・借主のどちらからも増減を請求できます。また定期借家契約で家賃改定の特約を定めた場合は、その特約が優先されます(同法38条9項)。「家賃は○年間変わらない」という口頭説明を信じないで、契約書の家賃改定条項を読んでください。
1,600万円で売却、家賃6万円が3年後に11万円になった場合
- 最初の3年間:6万円 × 36か月 = 216万円
- 残り:1,600万円 − 216万円 = 1,384万円
- 値上げ後:1,384万円 ÷ 11万円 ≒ 125か月(約10年5か月)
- → 売却代金を家賃だけに充てても、約13年5か月で使い切る計算
当初の家賃6万円のままなら約22年持つ計算なので、値上げで約9年短くなります。値上げの可能性も含めて試算することが大切です。
家賃の増減請求の要件や、話し合いがまとまらないときの流れは、賃料減額請求は拒否できる?サブリース家賃減額の対応と買取での出口で借地借家法32条を詳しく解説しています。
生活費・借金返済のためのリースバックは特に危険
国民生活センターは、借金返済や生活費を工面するためにリースバックを契約すると、その後の家賃の支払いが困難になりがちだと注意を呼びかけています。収入が足りないから家を売るのに、売った後に家賃という新しい固定費が加わるからです。
ガイドブックも、受け取った資金から家賃を払い続けると「いずれ底を突く」可能性を挙げています。夫が所有者の家でリースバックをした後に夫が亡くなると、妻の年金額が変わって家賃負担が重くなることにも注意が必要です。
- 手元に残る売却代金(ローン完済後)はいくらか
- 年金など毎月の収入から、家賃を払って生活できるか
- 何年住むつもりで、その間の家賃総額はいくらか
- 家賃が値上げされる条件・時期が契約書に書かれていないか
- 配偶者が先に亡くなった場合でも払い続けられるか
- 家賃総額は「売却代金 ÷ 月額家賃」で何か月分かを出して比べる
- 家賃改定の条項は口頭説明ではなく契約書で確認する
- 借金返済・生活費目的なら、売却や任意売却など別の方法も比べる
失敗パターン2:定期借家契約で再契約できず退去
リースバックでは更新のない定期借家契約が多く使われます。期間満了後も住めるかは貸主の合意次第なので、契約の種類と期間を必ず確認します。
「売った後もずっと住める」と思って契約したのに、期間満了で退去を求められる。これも国土交通省と国民生活センターの双方が取り上げている典型的な失敗です。国土交通省が令和2年度にリースバック事業者に行ったアンケートでは、締結している契約の種類(複数回答)で定期借家契約が80%と最も多くなっています。
普通借家契約と定期借家契約の違い
賃貸借契約には大きく2種類あります。普通借家契約は、借主が希望すれば、貸主に正当な理由がない限り更新されます。一方、定期借家契約は契約の更新がなく、期間の満了で確定的に終わります。
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| 項目 | 普通借家契約 | 定期借家契約 |
|---|---|---|
| 契約方法 | 書面でも口頭でも可能 | 書面(または電磁的記録)に限る。更新がないことを事前に書面で説明する必要あり |
| 契約期間 | 1年以上(1年未満は期間の定めがない契約とみなされる) | 短期・長期とも制限なし |
| 期間満了時 | 借主が希望すれば、貸主に正当事由がない限り更新 | 期間満了で終了し、更新はない(双方合意なら再契約) |
| 借主が亡くなったとき | 賃借権は相続される | 賃借権は相続されるが、期間満了で終了 |
※国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブックの作成に際しての検討会での検討内容について」をもとに作成。
定期借家契約にするには、貸主があらかじめ「更新がなく期間満了で終了する」ことを書面で説明しなければならず、この説明がなければ更新しない旨の定めは無効になります(借地借家法38条)。説明を受けた書面が手元にあるかも確認しておきましょう。
再契約は貸主が拒めば成立しない
定期借家契約で住み続けたい場合は、期間満了時に改めて契約を結び直す「再契約」が必要です。再契約は貸主と借主の双方が合意しなければ成立しません。「再契約の予定があります」という意向表明だけでは住み続けられる保証にならない点に注意してください。
期間が1年以上の定期借家契約では、貸主は満了の1年前から6か月前までに「期間満了で終了する」旨を通知しなければ、終了を借主に主張できません(通知が遅れた場合は通知から6か月後)。この通知が届いた時点で、退去か再契約かの判断を迫られます。
- 契約開始売却と同時に定期借家契約(例:2年)
- 満了の1年前〜6か月前貸主から「期間満了で終了」の通知
- 再契約の交渉家賃などの条件が変わることもある
- 期間満了再契約の合意がなければ退去
家が第三者に売られ、貸主が変わることもある
リースバック事業者は、借主が住んだまま家を第三者に売却することがあります。ガイドブックは、再契約前に家が売られて貸主が変わった結果、新しい貸主から再契約を拒まれる可能性を指摘しています。
国民生活センターには、6年前に約1,000万円で売却し家賃7万円で住んでいたところ、転売を考えているらしい貸主から約10万円への値上げを求められ、応じないなら退去するよう迫られたという相談も寄せられています。長く住むつもりなら、普通借家契約にできないか、再契約の条件を契約書に書き込めないかを交渉しましょう。
賃貸借契約で確認する3点
- 契約の種類(普通借家か定期借家か)と契約期間
- 再契約の条件が契約書に具体的に書かれているか
- 家が第三者に売られた場合の扱い
失敗パターン3:売却価格が相場より大幅に低い
リースバックの買取価格は相場より低くなりやすく、事業者の半数が周辺相場の7割以下と答えています。1社の提示額だけで決めず、相場を複数社に確認します。
事業者が買い取って貸す仕組み上、売却価格は通常の仲介より低くなりやすい傾向があります。問題は、その差が適正かを確かめずに契約してしまうことです。
事業者の半数が「相場の7割以下」で買い取っている
国土交通省が令和2年度にリースバックを扱う事業者39社に行ったアンケートでは、「買取価格の周辺相場に対する割合」を「7割以下」と答えた事業者が50%でした。リースバックの価格が相場より安くなること自体は珍しくありません。
相場3,000万円の家を、相場の7割で売った場合
- 買取価格:3,000万円 × 70% = 2,100万円
- 相場との差:3,000万円 − 2,100万円 = 900万円
- → 家賃月15万円なら、この差額だけで5年分(60か月)に相当
「住み続けられる」ことの対価として、どれだけの差を受け入れるのかを数字で把握してから判断してください。
相場とかけ離れた価格で売ってしまった相談事例
ガイドブックには、市場での取引価格が1億2,000万円相当の自宅を、十分な説明もないまま700万円で売却し、月約15万円で借りる契約をしてしまったという事例が載っています。国民生活センターにも、認知症の父親が戸建ての自宅を相場とかけ離れた400万円で売却していたという相談が寄せられています。
また、築40年のマンションを1,200万円で売る契約をした後、親族に「売却価格が安い」と言われて解約しようとしたら、手付金50万円の返金と違約金50万円を求められたという相談もあります。安いと気づくのは、たいてい契約した後です。
価格の妥当性を確かめる方法
国交省のガイドブックと検討会報告書は、提示された価格の根拠や相場について事業者に意見を聞き、物件の近隣で相場を把握している宅建業者などに重ねて査定を依頼することが有効だとしています。
- リースバック事業者に価格の根拠(周辺の成約事例など)を聞く
- 通常の売却ならいくらになるか、複数の不動産会社に査定を取る
- 複数のリースバック事業者から、価格と家賃の条件を取り寄せる
- リースバックの価格が相場より低いこと自体は一般的
- 相場を知らないと、低すぎる提示額に気づけない
- 通常売却の査定額と並べて、差額を数字で確認する
リースバックの提示額、相場と比べて安すぎませんか?
持ち続けるか、手放すか。判断の前提になるのは「現在の価格」です。
売却するか決めていなくても大丈夫です。
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失敗パターン4:買い戻すつもりが買い戻せない
買戻しは事業者との約束ごとで、法律上の当然の権利ではありません。「いつまでに」「いくらで」買い戻せるかが契約書に書かれているかを確認します。
「いずれ買い戻せます」という説明を聞き、一時的な資金繰りのつもりで選ぶ人もいますが、条件があいまいなままだと、いざというときに買い戻せません。
買戻しは「当然の権利」ではない
ガイドブックは、買戻しを一度家を買った事業者が、条件次第で「もう一度自分に家を売る」という約束ごとだと説明しています。国交省の検討会報告書には、2年後に買い戻すつもりで契約したのに、自宅が業者向けに売りに出され、購入申込書を出した翌日に他へ売れてしまったという事例も紹介されています。
口約束の「買い戻せます」には効力を期待できないと考え、買戻しを望むなら条件を契約書に書いてもらうことが前提です。
買戻し価格が売却価格の5倍になった例も
国民生活センターには、1年前に自宅マンションを200万円で売却し、2年の定期借家契約で住んでいたところ、買い戻したいと申し出たら1,000万円(売却額の5倍)を提示されたという相談が寄せられています。国交省の検討会報告書にも、買戻し価格が売却金額の5倍程度と言われた事例が載っています。
買い戻すには、売却代金と同じかそれ以上のお金を一度に用意する必要があります。売却代金を家賃や生活費に使ってしまえば、買戻しの資金はさらに遠のきます。家賃を滞納すると、買戻しの条件を定めていても買い戻せなくなることがあります。
契約書で確認すべき買戻しの条件
民法の「買戻しの特約」は売買契約と同時に結ぶもので、期間は最長10年です(民法579条・580条)。期間を定めなかった場合は5年以内に買い戻さなければならず、定めた期間を後から延ばすこともできません。このほか「再売買の予約」という形で買戻しの期間を決める方法もあります。
- 買戻しができる期限(いつまでに申し出るか)
- 買戻し価格の金額、または算定方法
- その金額を自分が本当に用意できるか
- 家が第三者に売られた場合に、買戻しの条項を引き継ぐ義務があるか
失敗パターン5:契約内容を理解しないまま署名
自宅を不動産業者に売る契約は、クーリング・オフで解除できません。その場で署名せず、家族に相談してから決めることがいちばん確実な回避策です。
自宅を業者に売るとクーリング・オフはできない
宅地建物取引業法のクーリング・オフは、宅建業者が売主で、消費者が買主の場合に限られます(宅地建物取引業法37条の2)。リースバックのように消費者が業者に家を売る場合は対象外です。
売主から解除するには、受け取った手付金の倍額を払う「手付倍返し」が一般的で、買主が契約の履行に着手した後はこれも使えません(民法557条)。手付解除の期間を過ぎると、ほとんどの場合は契約書に定めた違約金が必要になります。
2,000万円の売買契約で、違約金が代金の20%の場合
- 違約金:2,000万円 × 20% = 400万円
- → 契約翌日に解約を申し出ても、400万円を求められる可能性がある
ガイドブックには約2,000万円で契約した後に解約を申し出たら約400万円の違約金を求められた事例が、国交省の検討会報告書には契約1週間後の解約で20%の違約金と言われた事例が載っています。
長時間・強引な勧誘で契約してしまう
国民生活センターには、朝10時から夜10時過ぎまで勧誘され続けた、「玄関で10分だけ」と言われて入れたら売却を執拗に迫られた、といった相談が寄せられています。断ったのに勧誘を続けることや長時間の勧誘は法律で禁止されており、売るつもりがなければその場ではっきり断ることが大切です。
「10年後には取り壊される」といった事実と異なる説明を信じて契約した事例もあります。不実の告知など不当な勧誘があった場合は、消費者契約法により契約を取り消せる場合もあります。マンションの建て替え計画の有無は、管理組合に聞けば確認できます。
判断能力が低下した親が契約していた
高齢の親が家族の知らないうちに契約し、後から気づくケースも目立ちます。意思能力がない状態で結んだ契約は無効ですが、家族が気づくのは契約した後になりがちです。判断能力に不安がある場合は、説明の場に家族が同席することが国交省の検討会報告書でも有効な方法の一つとされています。
また、契約書を「後で送る」と持ち帰られて手元に残っていない事例もあります。契約したら必ず売買契約書と賃貸借契約書を受け取ることも忘れないでください。親の判断能力が低下していて家を売る必要がある場合は、成年後見人が不動産売却するには|家庭裁判所の許可・期間・費用と買取も参考になります。
リースバックは「その日に決めない」だけで、失敗の多くを避けられます。契約書を持ち帰り、家族や第三者と一緒に家賃・期間・価格・買戻し・違約金を確認してから判断してください。
見落としがちな失敗:修繕・原状回復・相続人への請求
売った後は借主の立場になるため、修繕や設備の設置は自由にできず、退去時には原状回復の費用もかかります。修繕の負担区分と原状回復の範囲を契約前に確認します。
家賃や期間ほど目立ちませんが、「今まで通り住める」と「今まで通り自由に使える」は違います。
自分の家ではないので自由に直せない
所有権は事業者に移っているため、設備を新しく設置したりリフォームしたりするには、原則として貸主の承諾が必要です。国交省の検討会報告書には、蓄電池の設置を契約したところ、貸主から「キャンセルできないか、設置するなら退去時に買い取ってもらう」と言われた事例が載っています。
リースバック後は固定資産税や修繕費の支払いが不要になる場合もありますが、それは契約条件次第です。どの設備が壊れたら誰が修繕費を負担するのかを、設備ごとに契約書で確認しておきましょう。
退去時の原状回復と、相続人への請求
借主は「善良な管理者の注意」をもって家を使う義務を負い、退去時には故意・過失などによる損耗の原状回復を求められることがあります。経年劣化や通常の使用による損耗は原則として借主の負担になりませんが、これと異なる特約がある場合もあります。
国交省の検討会報告書には、自宅を売って借家として住んでいた姉が亡くなり、その原状回復費用を相続人のきょうだいが請求された事例も載っています。賃貸借契約上の責任(原状回復など)は相続によって家族が負う場合があるため、家族も契約内容を知っておくことが大切です。
リフォーム工事とセットで勧められるケース
国民生活センターは2026年8月、訪問業者が高額なリフォーム工事を契約させ、「払えないならリースバックで」と自宅の売却を勧めるケースに注意を呼びかけました。一人暮らしの母親が自宅を1,100万円で売却し、同じ日に450万円の工事も契約していたという相談では、売却額では3年ほどしか住み続けられない状況になっていました。
他人の所有物になる家のリフォーム代を自分で払う形になり、リフォームで売却価格が上がるわけでもありません。工事とリースバックを同時に勧められたら、いったん立ち止まってください。
- 設備の設置・リフォームは貸主の承諾が必要
- 原状回復の範囲と特約を確認し、家族にも共有する
- リフォーム工事とセットの勧誘は利用目的として不適切
後悔しないための回避策と、ほかの選択肢
リースバックは選択肢の一つにすぎません。通常の売却で引渡し時期を調整する方法など、ほかの手段と比べてから選ぶことが最大の回避策です。
国土交通省のガイドブックは、自宅に住みながら資金を得る方法として、リースバックのほかに「金融機関からの融資(リバースモーゲージを含む)」と「通常の売却を選んで、決済・引渡しの時期を調整する方法」を挙げ、比較・検討を勧めています。
リースバック以外の方法と比べる
リースバックが向いているのは、高齢者施設への入居待ちや建て替え期間など、住み続ける期間がある程度決まっているケースです。ガイドブックの利用例も、2年や1年の定期借家契約で期間を区切っています。長く住み続けたいなら、ほかの方法のほうが合っている場合があります。
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| 方法 | 仕組み | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| リースバック | 売却して、家賃を払って住み続ける | 住む期間が決まっている人(施設入居待ち・建て替えなど) | 価格が相場より低め、家賃が続く、定期借家が多い |
| 通常の売却+引渡し時期の調整 | 相場で売り、引渡しを先にしてもらう | 住み替え先と時期の見通しが立っている人 | 希望する期間の引渡し猶予を買主が了承するか確認が必要 |
| リバースモーゲージ | 自宅を担保に借り、死亡時などに担保を処分して返済 | 所有したまま住み続けたい人 | 融資なので、契約終了時に返済が必要 |
| 不動産会社による買取 | 不動産会社に直接売って住み替える | 早く確実に現金化したい人 | 住み続けることはできない |
※国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」の比較対象をもとに作成。条件は事業者・金融機関により異なります。
住宅ローンの返済が苦しくてリースバックを考えている場合は、債権者の同意を得て売る任意売却も選択肢になります。流れは任意売却の流れと期限|投資用マンションの残債・入居者対応と買取を参考にしてください。
契約前に確認するチェックリスト
国土交通省のガイドブックが挙げる7つのポイントと国民生活センターのアドバイスを、契約前のチェックリストにまとめました。1つでも答えられない項目があれば、署名は待ってください。
- リバースモーゲージや通常の売却など、ほかの方法と比べたか
- 売却価格の根拠を聞き、通常売却の査定額と比べたか
- 住む期間の家賃総額が、売却代金の範囲に収まるか計算したか
- 普通借家か定期借家か、期間と再契約・更新の条件を確認したか
- 買戻しの期限と価格が契約書に書かれているか
- 修繕の負担区分と、原状回復の範囲を確認したか
- 違約金の額と、手付解除できる期限を確認したか
- 家族・親族に契約内容を説明し、同意を得たか
家族と一緒に読むなら、国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」(PDF)が手元にあると話が早く進みます。
契約してしまった後の相談先
国民生活センターは、少しでも不安があれば早めに家族や消費生活センター等に相談するよう呼びかけています。
- 契約書を手元にそろえる売買契約書と賃貸借契約書を確認します。受け取っていなければ交付を求めます。
- 消費者ホットライン「188」に電話する最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等を案内してもらえます。家族やホームヘルパー、地域包括支援センターの職員などからの相談も可能です。
- 必要に応じて専門家に相談する違約金や契約の取消しが争点になる場合は、弁護士など法律の専門家に相談します。
よくある質問
リースバックの契約はクーリング・オフできますか?
自宅を不動産業者に売るリースバックの売買契約は、宅地建物取引業法のクーリング・オフの対象外です。解除するには手付金の倍額を払う手付倍返しが一般的で、その期間を過ぎると契約書に定めた違約金がかかることが多いため、署名前に家族と内容を確認してください。
定期借家契約でも住み続けることはできますか?
期間満了時に貸主と再契約できれば住み続けられますが、再契約は双方の合意が必要で、貸主が拒めば退去しなければなりません。長く住みたい場合は、普通借家契約にできないか、再契約の条件を契約書に明記できないかを契約前に交渉しましょう。
リースバックの後に家賃が上がることはありますか?
あります。国民生活センターには、家賃約6万円が3年後に約11万円になった相談が寄せられています。契約書に家賃改定の特約があればそれに従うことになるため、口頭の「家賃は変わらない」という説明ではなく、契約書の条項で確認してください。
家族がリースバックを契約してしまった場合はどうすればいいですか?
まず売買契約書と賃貸借契約書を確認し、手元になければ事業者に交付を求めます。そのうえで消費者ホットライン「188」に電話し、最寄りの消費生活センター等に相談してください。相談は本人だけでなく家族からでも可能で、親の判断能力の低下が疑われる場合は、その点も相談の際に伝えてください。
この記事のまとめ
- リースバックの相談は2024年度に239件、契約当事者の約7割が70歳以上
- 家賃総額が売却代金を超えないか、値上げも含めて契約前に計算する
- 定期借家契約は更新がなく、再契約は貸主の合意次第
- 売却価格は相場より低くなりやすいので、通常売却の査定額と比べる
- 買戻しは当然の権利ではなく、期限と価格を契約書で確認する
- クーリング・オフはできないので、その日に署名しない
リースバックが自分に合うかどうかは、通常の売却ならいくらで売れるのかを知ってはじめて判断できます。まずは自宅の現在の価格を確認するところから始めてください。