ポストに「この地域で購入希望のお客様がいます」「売り物件募集中」と書かれたチラシが入っていて、気になっている方は多いのではないでしょうか。売却を少し考えていた方なら、なおさら「本当に買いたい人がいるなら話を聞いてみようか」と迷うはずです。
結論から言うと、こうした売り物件募集のチラシは、不動産会社が売り物件を仕入れ、売却の依頼(媒介契約)を受けるための営業ツールです。購入希望者が実在することもありますが、チラシの言葉だけで売却先や依頼先を決めないことが大切です。問い合わせるなら確認すべき点を押さえ、査定は必ず複数社で比べましょう。
この記事を読むとわかること
- 「購入希望のお客様がいます」チラシが配られる本当の目的
- チラシの内容や会社が信頼できるかを見極める方法
- おとり広告・誇大広告に関する宅建業法と公正競争規約のルール
- 問い合わせるときに確認すべきことと、しつこい勧誘への対処
- 媒介契約を結ぶ前に知っておきたい期間・報告・手数料のルール
この記事の結論忙しい方はここだけ
- 売り物件募集のチラシの主な目的は、売り物件の仕入れと媒介契約の獲得。成約すれば仲介手数料(3,000万円の物件なら上限105.6万円)が会社の収入になります。
- 本当かどうかは、購入希望者の条件の具体性、会社の免許番号(国土交通省の検索システムで確認可能)、問い合わせへの回答で見極めます。
- 宅建業法32条は誇大広告を禁じ、違反は6か月以下の拘禁刑・100万円以下の罰金の対象。公正競争規約21条は存在しない物件などの「おとり広告」を禁じています。
- 反応するのは問題ありませんが、専任系の媒介契約は最長3か月。その場で契約せず、条件を書面で確認してから判断します。
- チラシの1社だけで決めず、仲介と買取を含めて複数社の査定を比べることが、適正価格で売る近道です。
売り物件募集チラシの正体と目的
売り物件募集のチラシは、不動産会社が売却を考えている所有者を見つけ、売り物件を仕入れるための広告です。会社の収入源は、成約時の仲介手数料や買い取った物件の再販売です。
「〇〇町内で一戸建てを探しているお客様がいます」「このマンション限定で購入希望者がいます」といった文面のチラシは、主に地域の不動産会社が配っています。売り物件がなければ仲介の仕事は始まらないため、不動産会社にとって売り物件の確保は最も重要な営業活動のひとつです。
誰が、なぜ配っているのか
配っているのは、売買の仲介をする不動産会社と、物件を自ら買い取って再販売する買取業者が中心です。どちらも、売り物件が手元にない限り売上が立たないという事情は同じです。
買いたい人は不動産情報サイトなどで物件を探せますが、売りたい人は「まだ決めていない」段階では自分から動かないことが多いものです。そこで、まだ市場に出ていない物件の所有者に直接届くチラシが使われます。
不動産会社に「買主を探して売買契約を成立させてほしい」と依頼する契約のことです。宅建業法34条の2により、不動産会社は媒介契約を結んだら遅滞なく書面を作成して依頼者に交付しなければなりません。
本当の狙いは「媒介契約」の獲得
仲介会社がチラシを配る一番の目的は、所有者から媒介契約を受けることです。媒介契約を受けて売買が成立すれば、売主から仲介手数料を受け取れます。仲介手数料の上限は宅建業法46条にもとづく国土交通大臣の告示で決まっています。
上限は物件価格に応じた3段階の料率(税込)で計算し、200万円以下の部分は5.5%、200万円超400万円以下の部分は4.4%、400万円超の部分は3.3%です。たとえば3,000万円で売れた場合、上限は105.6万円になります。この金額が、チラシ1枚から始まる営業の動機になっています。
つまり、チラシに書かれた「購入希望のお客様」は、売主と接点を持つための入り口という面があります。購入希望者が実在する場合でも、その人が実際にあなたの家を買うとは限りません。
買取業者が配る「仕入れ型」のチラシもある
「高価買取」「現金で即買取」といった文面のチラシは、不動産会社が自ら買主となる買取の仕入れが目的です。この場合は仲介ではないため仲介手数料はかかりませんが、買取業者は再販売で利益を出す必要があるため、買取価格はその利益やリフォーム費用などを見込んだ金額になります。
チラシのタイプによって、相手が何を求めているかが変わります。どのタイプかを見分けてから対応を考えましょう。
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| チラシのタイプ | よくある文面 | 会社の目的 | 売主側の費用 |
|---|---|---|---|
| 購入希望者紹介型 | 「この地域で購入希望のお客様がいます」 | 媒介契約の獲得(仲介) | 成約時に仲介手数料 |
| 査定案内型 | 「無料査定します」「近隣の成約事例をお知らせ」 | 売却相談・媒介契約の獲得 | 成約時に仲介手数料 |
| 買取(仕入れ)型 | 「現金で買い取ります」「すぐに現金化」 | 自社で買い取って再販売 | 仲介手数料なし(買取価格は低めになりやすい) |
※1枚のチラシに複数のタイプの文面が混在していることもあります。
- チラシは売り物件の仕入れ・媒介契約の獲得を目的とした営業広告
- 仲介なら仲介手数料、買取なら再販売の利益が会社の収入源になる
「購入希望のお客様」は本当にいる?見極め方
チラシだけで真偽は判断できません。文面の具体性・会社の免許・問い合わせへの回答の3点を順に確かめれば、信頼できる相手かどうかはおおむね見えてきます。
購入希望者が実在するケースもあれば、特定の購入希望者がいないまま、地域一帯に同じ文面を配っているケースもあります。どちらかを外見だけで決めつけず、確認できる材料を集めて判断しましょう。
チラシの文面で具体性をチェックする
本当に特定の購入希望者がいる場合、エリア、物件種別、広さ、予算、入居希望時期など、条件が具体的に書かれていることが多いものです。反対に「この地域で」「どんな物件でも」と条件があいまいな場合は、特定の人ではなく一般的な需要を指しているだけの可能性があります。
同じ会社のチラシで「お客様」の条件が毎回同じ、隣の地区にも同じ文面が配られている、といった点も参考になります。ただし、条件が具体的だから必ず本当というわけでもないため、次の確認に進みます。
- 購入希望者の希望条件(エリア・広さ・予算・時期)が具体的に書かれているか
- 会社名・所在地・電話番号・宅建業の免許番号が書かれているか
- 「仲介」「売主」など、取引の形(取引態様)が読み取れるか
- 「今だけ」「期限までに」など、判断を急がせる表現が強すぎないか
会社の免許と処分歴を確認する
不動産の売買を仲介する会社は、宅建業法3条にもとづく宅地建物取引業の免許が必要です。免許は国土交通大臣か都道府県知事が出し、有効期間は5年で、続けて営業するには更新が必要です。
チラシに免許番号があれば、国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで業者名や免許の内容を確認できます。あわせて、国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで、宅地建物取引業者の行政処分の情報を調べることもできます。
免許番号が見当たらないチラシは要注意
- 免許番号が確認できれば、検索システムで会社の実在と免許の内容を照合できる
- 会社名や連絡先があいまいなチラシには、個人情報を伝える前に一度立ち止まる
問い合わせで「お客様」の中身を聞く
最終的には、問い合わせたときの回答が一番の判断材料です。「その購入希望者の希望条件は何ですか」「予算はいくらですか」「住宅ローンの事前審査は済んでいますか」と具体的に聞いてみましょう。
本当に条件に合う購入希望者がいれば、個人を特定しない範囲で条件を説明できるはずです。回答があいまいなまま「まずは査定を」「まずは媒介契約を」と話を進めようとする場合は、購入希望者の話は契約を取るための入り口と考えて、慎重に対応しましょう。
問い合わせると「専任媒介契約を結んでからでないと、購入希望者をご案内できません」と言われることもあります。どの種類の媒介契約を結ぶかは売主と会社の合意で決まるもので、その場で決める必要はありません。一般媒介ではだめな理由を聞き、即答せずに持ち帰るようにしましょう。
おとり広告・誇大広告の規制
不動産会社の広告は、宅建業法と「不動産の表示に関する公正競争規約」で規制されています。誇大広告は刑事罰の対象、おとり広告は規約違反として、警告や違約金の措置があります。
不動産広告のルールは大きく2つあります。ひとつは国の法律である宅地建物取引業法、もうひとつは業界の自主ルールとして定められた公正競争規約です。チラシを読むときの「ものさし」として知っておくと、怪しい広告を見分けやすくなります。
宅建業法の誇大広告の禁止と取引態様の明示
宅地建物取引業法32条は、不動産会社が広告をするとき、物件の所在・規模・形質、利用の制限、環境・交通、代金や支払方法などについて、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利だと誤認させる表示を禁じています。
この規定に違反すると、宅建業法81条により6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されることがあります。また、32条違反は監督官庁による業務停止処分の対象にもなっています(宅建業法65条)。
さらに宅建業法34条は、売買などの広告をするときに、自社が売主なのか、代理なのか、媒介(仲介)なのかという取引態様の別を明示するよう義務づけています。チラシで取引の形が読み取れるかは、この点からもチェックできます。
公正競争規約が禁じる「おとり広告」3つの型
不動産公正取引協議会連合会が公表している不動産の表示に関する公正競争規約の21条は、次の3つの広告を「おとり広告」として禁じています。
- 物件が存在しない実際には取引できない物件の表示
- 取引の対象になり得ない成約済み・処分を任されていない他人の物件など
- 取引する意思がない案内を拒む・難点を挙げて他の物件を勧める
同連合会のおとり広告ガイドラインでは、合理的な理由なく広告物件への案内を拒否する場合や、広告物件の難点をことさら指摘して他の物件を勧める場合が「取引する意思がない」例として挙げられています。規約に違反すると、公正取引協議会は警告や50万円以下の違約金を課すことができます。
景品表示法36条1項にもとづき、公正取引委員会と消費者庁長官の認定を受けて定められた業界の自主ルールです。不動産の表示に関する公正競争規約は、各地の不動産公正取引協議会に加盟する不動産会社などに適用されます。
「購入希望者がいます」チラシはどう扱われる?
注意したいのは、規約21条のおとり広告は売り出し中の物件の広告を想定した規定だという点です。「購入希望者がいます」という売主向けのチラシを名指しした条文は、規約の中に見当たりません。
ただし規約23条2項は、物件の取引に関する事項について、事実に相違する表示で不当に顧客を誘引し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある広告を広く禁じています。どの広告が違反にあたるかは個別の判断になるため、読者としては「規制があるから安心」ではなく、自分で確かめる姿勢が大切です。
おかしいと感じた広告は、各地の不動産公正取引協議会や、免許を出した都道府県・国土交通省の担当窓口に相談できます。違反かどうかを自分で断定してトラブルにせず、まずは相談先に事実を伝えましょう。
チラシの話を聞く前に、ご自宅の相場を知っていますか?
持ち続けるか、手放すか。判断の前提になるのは「現在の価格」です。
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反応してよい?問い合わせ時の確認事項
問い合わせること自体は問題ありません。ただしその場で媒介契約や売買契約を結ばないことを決めてから連絡し、確認事項を順に聞きましょう。
売却をまったく考えていないなら、チラシは読み流せば十分です。少しでも売却を考えているなら、チラシをきっかけに相場を知るのは悪いことではありません。大切なのは、相手のペースで話を進めないことです。
反応すること自体は問題ない
チラシに反応するメリットとデメリットを整理すると、次のようになります。メリットを生かすには、問い合わせる前に「今日は話を聞くだけ」と決めておくのが効果的です。
メリット
- 地域に詳しい会社から、近隣の需要や相場感を聞ける
- 条件に合う購入希望者が本当にいれば、早く売れる可能性がある
- 無料査定をきっかけに、売却を考える材料が手に入る
デメリット
- 氏名・住所・電話番号を伝えると、その後の営業連絡が増えやすい
- その1社の査定額が基準になり、相場より安く売るおそれがある
- 購入希望者の話を理由に、急いで媒介契約を求められることがある
問い合わせで必ず確認したいこと
問い合わせるときは、次の項目を順に確認しましょう。メモを用意し、回答をそのまま書き留めておくと、あとで他社と比べるときにも役立ちます。
- チラシの購入希望者の条件(エリア・広さ・予算・時期)と、住宅ローンの事前審査の状況
- 会社の取引態様(仲介か、自社で買い取るのか)
- 勧められる媒介契約の種類(一般・専任・専属専任)と有効期間
- 仲介手数料の金額と、それ以外にかかる費用の有無
- 査定額の根拠(どの成約事例・どの計算方法にもとづくか)
- 購入希望者と条件が合わなかった場合、その後どう売却活動をするか
特に大切なのは、購入希望者との話がまとまらなかったときの対応です。媒介契約は一度結ぶと一定期間続くため、「その人が買わなかったら、どこで、どう売り出すのか」まで聞いてから判断しましょう。
しつこい勧誘を受けたときの対処
宅建業法47条の2と同法施行規則16条の11は、不動産会社の勧誘のしかたにもルールを設けています。たとえば、勧誘の前に会社名・担当者名・勧誘の目的を告げないこと、断ったのに勧誘を続けること、迷惑な時間帯の電話や訪問は禁止されています。
契約するつもりがなければ、「売却の予定はないので、今後の連絡は不要です」とはっきり意思表示することが大切です。それでも勧誘が続く場合は、会社名・日時・内容を記録し、免許を出した行政庁の窓口に相談しましょう。どこに相談すればよいか分からないときは、消費者ホットライン「188」に電話すると、近くの消費生活センターなどの相談窓口を案内してもらえます。
- 問い合わせは「話を聞くだけ」と決めてから。その場で契約しない
- 購入希望者の条件、取引態様、媒介契約の種類、手数料、査定根拠を確認
- 断った後の勧誘継続は禁止行為。記録して行政庁に相談できる
媒介契約を結ぶ前に知っておくルール
媒介契約には3種類あり、専任系は有効期間3か月以内・定期報告・レインズ登録が法律で決まっています。仲介手数料の上限と査定額の根拠も、契約前に確認しておきましょう。
チラシの会社と話が進むと、多くの場合は媒介契約の締結を求められます。どの契約を、どの条件で結ぶかによって、売却活動の自由度や情報の広がり方が変わります。
媒介契約は3種類。期間と報告義務が違う
媒介契約には、複数社に依頼できる一般媒介契約、1社にだけ依頼する専任媒介契約、1社にだけ依頼し自分で見つけた買主とも直接契約できない専属専任媒介契約があります。専任系の2つは、宅建業法34条の2と同法施行規則で次のように定められています。
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| 項目 | 一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 |
|---|---|---|---|
| 他社への重ねての依頼 | できる | できない | できない |
| 自分で見つけた買主との契約 | できる | できる | できない |
| 有効期間(法律上) | 法律上の上限規定なし | 3か月以内 | 3か月以内 |
| 業務処理状況の報告 | 法律上の頻度規定なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
| 指定流通機構(レインズ)への登録 | 法律上の義務なし | 契約から7日以内 | 契約から5日以内 |
※登録期限の日数には不動産会社の休業日を含みません。購入の申込みがあったときは、どの契約でも遅滞なく依頼者に報告する義務があります。
- 専任媒介契約を締結契約内容を記載した書面が交付される
- 5日(専属専任)/7日(専任)以内指定流通機構(レインズ)に物件を登録
- 1週間(専属専任)/2週間(専任)に1回以上売却活動の状況を報告
- 契約から3か月以内に満了更新は依頼者の申出があったときだけ
有効期間を3か月より長く定めても、その期間は3か月とされ、更新は依頼者からの申出がある場合に限られます。チラシの購入希望者と話がまとまらなかったときは、3か月の満了時に依頼先を見直せると覚えておきましょう。
国土交通大臣が指定した不動産流通のための情報システムで、不動産会社どうしが売り物件の情報を共有するしくみです。専任系の媒介契約では登録が義務で、登録した会社は登録を証する書面を依頼者に引き渡さなければなりません。
仲介手数料の上限を計算しておく
仲介手数料の上限は、物件価格に3段階の料率をかけて合計した金額です。ただし800万円以下の「低廉な空家等」は、媒介に必要な費用を考慮して、30万円の1.1倍(33万円)まで受け取れる特例があり、媒介契約の締結時に説明と合意が必要とされています。
3,000万円で売れた場合の仲介手数料の上限
- 200万円以下の部分:200万円 × 5.5% = 11万円
- 200万円超400万円以下の部分:200万円 × 4.4% = 8.8万円
- 400万円超の部分:2,600万円 × 3.3% = 85.8万円
- → 合計で上限は105.6万円(税込)
料率は消費税10%込みの数字です。チラシの会社から示された手数料がこの上限を超えていないか、契約前に確かめましょう。
600万円の空き家を売った場合
- 原則の計算:11万円 + 8.8万円 + 200万円 × 3.3%(6.6万円)= 26.4万円
- 低廉な空家等の特例:上限は30万円 × 1.1 = 33万円
- → 特例を使う場合は、媒介契約の時点で金額の説明と合意が必要
空き家のチラシに反応した場合は、どちらの上限で手数料を請求されるのかを事前に確認しておくと安心です。
空き家の売却を考えるきっかけがチラシだった場合は、持ち続けるコストとの比較も欠かせません。維持費の目安は空き家の管理費用と管理をやめる判断基準で詳しく解説しています。
高すぎる査定額には根拠を求める
媒介契約を取りたい会社が、相場より高い査定額を示すことがあります。宅建業法34条の2第2項は、不動産会社が売買すべき価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。
「近隣のどの成約事例を参考にしたのか」「なぜその金額になるのか」を聞き、説明が具体的かどうかを見ましょう。根拠のない高い査定額で契約し、売れないまま値下げを繰り返すのは、売主にとって避けたい展開です。
チラシの1社で決めず、査定は複数社で比べる
チラシの会社も比較対象のひとつとして扱い、仲介と買取を含めて複数社の査定を手取り額で比べるのが、適正な価格で売るための基本です。
チラシの会社が誠実で、購入希望者も実在するなら、その会社に依頼するのはよい選択になり得ます。ただし、それを判断するためにも、他社の査定という比較材料が必要です。
1社だけで決めると比べる基準がない
査定額は会社によって差が出ます。1社の査定額しか知らなければ、それが相場より高いのか低いのかを判断できません。チラシの会社の査定額が高すぎても低すぎても、比べる相手がいないと気づけないのです。
また、複数社に話を聞くと、売り出し方や販売活動の提案、担当者の対応の違いも見えてきます。価格だけでなく、どの会社に任せれば納得して売れるかという視点で比べましょう。
仲介と買取を並べて手取りで比べる
仲介と買取では、売れる価格も、かかる費用も、売れるまでの期間も違います。表面の金額だけでなく、仲介手数料などを差し引いた手取り額で比べることが大切です。
仲介3,000万円と買取2,600万円の手取りを比べる場合(金額は仮定)
- 仲介で3,000万円で売れた場合:仲介手数料の上限105.6万円を差し引くと2,894.4万円
- 買取で2,600万円と提示された場合:仲介手数料はかからないため2,600万円
- → 差額は294.4万円。ただし仲介は買主が見つかるまで売れず、価格が下がる可能性もある
この差額を「早く確実に売れる安心」と比べてどう考えるかが判断の分かれ目です。どちらの金額も、複数社の査定を取って初めて現実的な数字になります。
売却益が出る場合は、税金も手取りに影響します。所有期間によって税率が大きく変わるため、短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率の違いもあわせて確認しておきましょう。相続した家を兄弟で共有している場合は、共有名義の不動産を売却する方法も参考になります。
チラシが届いてから売却を決めるまでの手順
チラシをきっかけに売却を検討する場合は、次の順番で進めると、相手のペースに流されずに判断できます。
- チラシの会社を確認する免許番号を検索システムで照合し、処分歴も調べておきます。
- 「話を聞くだけ」と決めて問い合わせる購入希望者の条件、取引態様、手数料、査定根拠を聞き、メモに残します。
- 他の会社にも査定を依頼する仲介と買取の両方の見解を集め、同じ条件で比べられるようにします。
- 手取り額と期間で比較する手数料・税金を差し引いた手取りと、売れるまでの見込み期間を並べます。
- 納得できる会社と契約する媒介契約の種類と有効期間を確認し、書面の内容を読んでから署名します。
売り物件募集のチラシは、売却を考えるきっかけとしては役立ちます。ただしチラシの言葉ではなく、複数社の査定と書面の条件で判断することが、後悔しない売却への一番の近道です。
よくある質問
「この地域で購入希望のお客様がいます」というチラシは嘘なのですか?
購入希望者が実在する場合もあり、一概に嘘とは言えません。ただし主な目的は売り物件の仕入れと媒介契約の獲得です。購入希望者の具体的な条件を問い合わせて確認し、その人が買わなかった場合の売却方法まで聞いてから判断しましょう。
チラシの会社に問い合わせたら、必ず売らなければいけませんか?
いいえ。問い合わせや査定の依頼だけで売却の義務は生じません。媒介契約や売買契約は書面で結ぶものなので、内容に納得するまで署名しないことが大切です。断ったあとの勧誘の継続は宅建業法の施行規則で禁止されています。
チラシの会社と専任媒介契約を結んだら、ずっと解約できませんか?
専任媒介契約と専属専任媒介契約の有効期間は、宅建業法で3か月以内と決められています。更新は依頼者からの申出がある場合だけなので、満了時に他の会社へ依頼先を変えることもできます。
怪しいチラシはどこに相談すればよいですか?
広告の表示については各地の不動産公正取引協議会、会社の営業のしかたについては免許を出した都道府県や国土交通省の担当窓口が相談先です。相談の際は、チラシの現物と、やり取りの日時・内容のメモを用意しておきましょう。
買取のチラシと仲介のチラシは、どちらに反応すればよいですか?
早く確実に現金化したいなら買取、時間をかけても高く売りたいなら仲介が向いています。買取は仲介手数料がかからない一方、価格は再販売の利益を見込んだ金額になります。どちらか一方に決める前に、両方の査定を取り、手取り額と売れるまでの期間で比べるのがおすすめです。
この記事のまとめ
- 売り物件募集のチラシは、売り物件の仕入れと媒介契約の獲得が主な目的
- 文面の具体性、免許番号と処分歴、問い合わせへの回答の3点で見極める
- 誇大広告は宅建業法32条で刑事罰の対象、おとり広告は公正競争規約21条で禁止
- 問い合わせは「話を聞くだけ」と決め、取引態様・手数料・査定根拠を確認する
- 専任系の媒介契約は3か月以内。手数料は3,000万円なら上限105.6万円
- チラシの1社で決めず、仲介と買取を含めて複数社の査定を手取りで比べる
チラシが届いたことは、自宅の価値を見直すよい機会です。まずは複数社の査定で、現在の価格を知ることから始めてください。