自己破産で家はどうなる?管財人の売却・任意売却と親族名義の注意点

自己破産で家がどうなるか、管財人の売却と個人再生・任意売却との違いを解説する記事のイメージ

借金の返済が追いつかず、自己破産を考え始めたとき、真っ先に気になるのが「今住んでいる家はどうなるのか」ではないでしょうか。住宅ローンが残っている、家族と一緒に住んでいる、親から相続した家がある——事情は人それぞれです。

結論から言うと、自己破産をすると持ち家は原則として手放すことになります。家は破産管財人が売却し、代金は債権者への返済(配当)に回ります。一方で、家を残したいなら個人再生の住宅資金特別条項という別の手続きがあります。

そして最も注意したいのが、破産の前に家を親族へ名義変更したり安く売ったりすることです。善意のつもりでも、取り消されたり借金が免除されなくなったりするおそれがあります。

この記事を読むとわかること

  • 自己破産で家が破産管財人に売却される仕組みと、住宅ローンの行方
  • 任意整理・個人再生・自己破産で家を残せるかどうかの違い
  • 個人再生の住宅資金特別条項を使える条件と返済額の目安
  • 破産前に家を任意売却する場合の進め方と注意点
  • 親族への売却・名義変更が否認や免責不許可につながる理由

この記事の結論

  1. 自己破産の手続きが始まると、家を含む財産の管理・処分の権利は裁判所が選んだ破産管財人に移り、家は売却されて配当に回ります。
  2. 住宅ローンの抵当権者は破産手続の外で競売ができます。売っても残ったローンは免責の対象ですが、連帯保証人への請求は残ります。
  3. 家を残したいなら、個人再生の住宅資金特別条項が選択肢です。住宅ローン以外の借金が5,000万円以下などの条件があり、住宅ローン自体は減りません。
  4. 破産前の名義変更(贈与)や親族への安値売却は、否認されて家が取り戻されたり、免責不許可の原因になったりします。
  5. 破産前に家を売るなら、適正価格で売り、代金の使い道を弁護士と決めてから進めることが大前提です。

自己破産すると家はどうなる?|破産管財人が売却して配当に回す

結論

自己破産の手続きが始まると、家は「破産財団」という債権者に配るための財産のまとまりに入ります。家は破産管財人が売却し、代金は債権者への配当に回るのが原則です。

自己破産は、借金を返せない状態(支払不能)にある人が、手元の財産を債権者に公平に分けたうえで、残った借金の支払いを免除してもらう裁判所の手続きです。持ち家は多くの人にとって最も大きな財産なので、手続きの中心になります。

手続きが始まると家の処分権は破産管財人へ

破産法は、破産手続開始の時に破産者が持っている一切の財産を破産財団とし、その管理と処分の権利は裁判所が選んだ破産管財人に専属すると定めています(e-Gov法令検索 破産法 第34条・第78条)。

つまり、名義は自分のままでも、手続きが始まったあとは自分の判断で家を売ったり貸したりできません。管財人が不動産を任意売却するには裁判所の許可が必要で、原則として事前に破産者の意見も聴くことになっています(同法第78条)。

用語の補足:破産管財人

破産手続で破産者の財産を調べ、お金に換えて(換価)債権者に配る役割を担う人です。裁判所が選任し、通常は弁護士が就きます。

家があると「管財事件」になり費用も変わる

自己破産には、管財人が選ばれる管財事件と、選ばれずに開始と同時に手続きが終わる同時廃止事件があります。法テラスの解説では、換価する財産がなく調査も不要な場合が同時廃止とされています(法テラス 自己破産の手続について)。

家という換価できる財産がある場合は、原則として管財人を立てて売却・配当する管財事件になります(ローン残高が家の価値を大きく上回る場合の扱いは、裁判所の運用によって異なります)。管財事件は裁判所に納める予納金が大きく、東京地方裁判所の案内では次のとおりです。

項目 同時廃止事件 管財事件(個人の自己破産)
破産管財人 選任されない 選任される
申立手数料(印紙) 1,500円 1,500円
予納金の基準額 13,046円 最低20万円+20,397円
家がある場合 原則として対象外 管財人が売却して配当

※東京地方裁判所民事第20部「破産事件の手続費用一覧」(令和8年1月1日現在)による。予納金は事案に応じて変更される場合があり、他の裁判所では金額や運用が異なります。弁護士費用は別途かかります。

手元に残せる財産と、家が残らない理由

破産しても、すべてを失うわけではありません。99万円以下の現金(民事執行法の差押禁止額66万円の1.5倍)や、生活に欠かせない家財道具などの差押えが禁止された財産は破産財団に入りません(破産法第34条第3項)。

ただし持ち家は、こうした「自由財産」に当たりません。裁判所は生活状況などを考えて自由財産の範囲を広げることもできますが(同条第4項)、家が丸ごと手元に残る前提で破産を選ぶのは危険です。家を残したいなら、次章以降で説明する個人再生を先に検討します。

POINT

自己破産と家の関係

  • 手続き開始後、家の処分権は管財人に移り、自分では売れない
  • 家がある自己破産は原則として管財事件となり、予納金は東京地裁で最低20万円程度
  • 残せるのは99万円以下の現金や差押禁止財産で、家は含まれない

住宅ローンが残っている家の行方|抵当権・残債・連帯保証人

結論

住宅ローンの抵当権者は、破産手続とは別に家を競売できます。売却代金で返しきれなかったローンは免責の対象ですが、連帯保証人への請求は免責されても消えません。

住宅ローンを組んで買った家には、ほぼ必ず金融機関(または保証会社)の抵当権が付いています。破産したからといって抵当権が消えるわけではなく、担保を持つ債権者は他の債権者より優先して回収できます。

抵当権者は破産手続の外で競売できる

破産法では、抵当権などの担保権者が持つ権利を別除権と呼び、破産手続によらないで行使できると定めています(第2条第9項・第65条)。つまり、抵当権者は管財人の売却を待たずに競売を申し立てることができます。

競売は法的手続による強制的な処分です。住宅金融支援機構は、任意売却は一般的に競売より高値で売却できることが期待され、競売と比べて自宅の引渡時期も調整しやすいと説明しています(住宅金融支援機構 融資住宅等の任意売却)。

用語の補足:別除権

破産手続開始の時に、破産者の財産に抵当権などを持っている債権者が、その財産から他の債権者より先に回収できる権利です。配当を待たずに担保を実行できます。

管財人による任意売却と担保権の消滅

実際には、管財人が抵当権者と話し合い、市場で買主を探して売却することもあります。抵当権が付いたままでは通常の売却は難しいため、破産法には裁判所の許可を得て売却し、担保権を消す担保権消滅許可の制度があります(第186条)。

このとき、売却代金の一部を破産財団に組み入れる場合は、管財人はその額をあらかじめ担保権者と協議しなければなりません(同条第2項)。ローン残高が家の価値を大きく上回る家は財団にお金が残らないため、扱いは管財人と裁判所の判断によります。

具体例

家が2,000万円で売れ、ローン残高が2,500万円だった場合

  • 売却代金2,000万円は、抵当権を持つ住宅ローンの債権者へ優先して支払われる(売却諸費用は考えない単純計算)
  • → 返しきれなかった500万円は、他の借金と同じ破産債権として扱われる
  • → 免責が確定すれば、この500万円も含めて支払う責任を免れる

ローンが残るオーバーローンの家でも、売却と免責で借金は整理されます。ただし次のとおり、連帯保証人が付いている場合は話が変わります。

売れない家は管財人が破産財団から「放棄」することもある

ローン残高が家の価値を大きく上回って売っても破産財団にお金が残らない家や、買い手が見つからない家は、管財人が売却をあきらめて破産財団から放棄することがあります。管財人が権利を放棄するには、原則として裁判所の許可が必要です(破産法第78条第2項第12号)。

放棄されると家の管理・処分の権利は破産者に戻りますが、抵当権は消えません。抵当権者が競売を申し立てたり、抵当権者の同意を得て任意売却したりして、結局は家を手放すことになるのが一般的です。「放棄されたから家を残せる」とは考えないでください。

残ったローンは免責、ただし連帯保証人には請求が残る

免責許可の決定が確定すると、破産者は配当を除いて破産債権の責任を免れます(破産法第253条第1項)。一方で、免責は保証人など破産者と共に債務を負う人に対する権利に影響しないと明記されています(同条第2項)。

配偶者や親が住宅ローンの連帯保証人・連帯債務者になっている場合、残ったローンの請求はその人に向かいます。家族を巻き込まないためには、破産を選ぶ前に保証の有無を確認し、家族も含めて対応を考える必要があります。

注意

税金(固定資産税など)、養育費、罰金などは免責されない債権として法律に列挙されています(破産法第253条第1項)。家を手放しても、滞納している固定資産税の支払い義務は残ります。

ローンが家の価値を上回る状態での売り方は、投資用マンションのオーバーローン売却の記事で抵当権抹消の仕組みとあわせて解説しています。

任意整理・個人再生との違い|家を残せる手続きはどれか

結論

家を残せる可能性があるのは、任意整理と個人再生です。住宅ローン以外の借金を大きく減らしながら家を残すなら、個人再生の住宅資金特別条項が中心的な選択肢になります。

借金を整理する方法は自己破産だけではありません。法テラスは、債務整理の方法として任意整理・自己破産・個人再生などを案内しています。家をどうしたいかによって、選ぶべき手続きが変わります。

任意整理:住宅ローンを対象から外して交渉する

任意整理は、裁判所などの公的機関を使わず、債権者と私的に話し合って支払額や支払方法を合意する手続きです(法テラス 任意整理とは何ですか)。自己破産のように財産を失うことがなく、官報にも載りません。

任意整理は債権者との個別の話合いなので、住宅ローンの債権者を交渉の相手に含めなければ、住宅ローンの契約はそのまま続きます。ただし借金そのものは返し続ける手続きのため、返済の原資と債権者の了解が必要です。

個人再生:住宅資金特別条項で家を残す

個人再生は、借金を減らした額を原則3年(特別な事情があれば最長5年)で分割返済する再生計画を裁判所に認めてもらう手続きです(e-Gov法令検索 民事再生法 第229条)。住宅ローン以外の借金総額が5,000万円以下で、継続的な収入の見込みがあることが条件です(第221条)。

このとき再生計画に住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を定めると、住宅ローンは従来どおり返済を続け、家を残したまま他の借金だけを減らせます。法テラスは利用条件として次の2点を挙げています(法テラス 住宅ローン特則の利用条件)。

  • 住宅ローンで建設・購入などした自宅の土地建物で、現実に住んでいること
  • 住宅ローンの債権者以外のための抵当権が設定されていないこと
  • (民事再生法)建物の床面積の2分の1以上を自分の住まいとして使っていること
  • (民事再生法)保証会社が代わりに返済した場合は、その全額履行から6か月以内に申し立てること

住宅ローン自体は減額されない点には注意が必要です。ただし従来どおりの返済を続ける内容では再生計画の認可の見込みがない場合には、約定の最終弁済期から10年以内、かつ完済時70歳以下の範囲で返済期間を延ばす定めも認められています(第199条第2項)。

具体例

住宅ローン以外の借金が600万円の人が小規模個人再生をした場合

  • 借金総額(住宅ローンを除く)が3,000万円以下なら、最低弁済額は「借金総額の5分の1」か「100万円」の多い方(上限300万円)
  • 600万円 × 1/5 = 120万円 > 100万円 → 最低弁済額は120万円
  • 3年(36か月)で返すと、月あたり約3.3万円+住宅ローンの通常返済

実際には、再生計画が債権者の一般の利益に反しないこと(民事再生法第174条第2項第4号)なども求められ、財産の状況によって返済額がこれより増えることがあります。

3つの手続きを並べて比べる

3つの手続きを、家の扱いを中心に比べると次のとおりです。いずれも信用情報機関に登録され、数年間は新たな借入れやクレジットカードの作成が難しくなる点は共通です。

横にスクロールできます

項目 任意整理 個人再生(住宅ローン特則) 自己破産
裁判所 使わない(私的な交渉) 使う 使う
持ち家 残せる 条件を満たせば残せる 原則として手放す
住宅ローン以外の借金 交渉で返済条件を見直す 大幅に減額し原則3年で返済 免責されれば支払い不要
住宅ローン 対象から外せる 減額されず返済を続ける 家の売却代金で返し、残りは免責
官報への掲載 されない される される
主な条件 返済原資と債権者の合意 継続収入・借金5,000万円以下など 支払不能であること

※法テラス「よくある相談」、民事再生法・破産法をもとに作成。どの手続きが使えるかは収入・借金の内容によって変わるため、弁護士・司法書士に確認してください。

この項目のまとめ
  • 任意整理は住宅ローンを外して交渉でき、家に影響しないが返済は続く
  • 個人再生の住宅ローン特則なら、家を残して他の借金を大きく減らせる
  • 住宅ローンを払い続けられない状況なら、家を売る前提で考える
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破産前に家を任意売却するという選択|進め方と注意点

結論

破産を申し立てる前に、抵当権者の同意を得て家を市場で売る方法があります。適正な価格で売り、代金の使い道を弁護士と決めてから動くことが条件です。

住宅ローンを払えない状態で家を売るとき、売却代金でローンを完済できないと抵当権を外してもらえません。そこで金融機関の同意を得て、通常の不動産取引として売るのが任意売却です。法テラスも、競売より高い金額での取引が期待できるため抵当権者が応じる場合がある、と説明しています。

破産前に売るメリット・デメリット

破産前の任意売却は、競売や管財人による売却を待つより、売る時期や引越しの段取りを自分で調整しやすい点が利点です。一方で、売却の進め方を誤ると、あとの破産手続で問題視されるリスクがあります。

メリット

  • 競売より高値で売れることが期待でき、残る借金を減らせる
  • 引渡しの時期を調整しやすく、退去後の生活設計を立てやすい
  • 状況により仲介手数料などを売却代金から控除できる場合がある

デメリット

  • 抵当権者の同意がないと進められない
  • 安値売却や代金の使い方次第で否認・免責不許可の対象になる
  • 代金でローンを完済できなければ、残った借金は別に整理が必要

住宅金融支援機構の案内では、任意売却の手続きに入る前に、本人が仲介業者を選んで「任意売却に関する申出書」を提出する流れになっています。売却代金からの諸費用の控除や延滞損害金の減額も、状況により相談に応じられる場合があるとされています。

売却代金の使い道で免責が左右される

抵当権者に払い終えて代金が手元に残った場合、その使い道には特に注意が必要です。特定の債権者(家族や知人など)だけに返済することは、他の債権者を害する「偏頗弁済」として、破産手続開始後に管財人に否認される可能性があります(破産法第162条)。

また、債権者に特別の利益を与える目的で義務のない弁済などをすることは、免責不許可事由にも挙げられています(第252条第1項第3号)。手元に残ったお金は、弁護士の指示があるまで動かさないのが原則です。

破産前の任意売却の進め方

すでに競売の手続が進んでいる場合の期限の考え方は、任意売却の流れと期限の記事で詳しく解説しています。破産を視野に入れた売却は、次の順番で進めます。

  1. 弁護士・司法書士に相談する破産・個人再生のどちらが適切か、売るべきかを先に判断してもらいます。売却後に破産するなら、代金の扱いもここで決めます。
  2. 複数社に査定を依頼する時価を客観的に把握します。査定書は「適正な価格で売った」ことを説明する資料にもなります。
  3. 抵当権者に任意売却を申し出るローンの借入先や保証会社に連絡し、売出価格と配分について同意を得ます。
  4. 売買契約・決済・抵当権抹消代金で抵当権者に返済し、抵当権を抹消して引き渡します。経緯と書類は申立てのために保管します。
この項目のまとめ
  • 任意売却は抵当権者の同意を得て市場で売る方法で、競売より高値が期待できる
  • 残った代金を家族などへの返済に使うと、否認や免責不許可の原因になる
  • 売る前に弁護士へ相談し、査定書など適正価格の裏付けを残す

親族への売却・名義変更は要注意|否認と免責不許可のリスク

結論

「家を家族の名義にしておけば守れる」は誤解です。破産前の名義変更や親族への安値売却は、管財人に否認されて家が取り戻されるうえ、免責不許可の原因にもなります。

破産法は、破産前に財産を減らして債権者を害する行為を、破産手続開始後に管財人が取り消して財産を取り戻せる否認権を定めています。家族を思っての行動でも、債権者から見れば財産隠しと区別がつきません。

用語の補足:否認

破産前に行われた財産の処分や特定の債権者への返済の効力を、破産財団との関係で否定し、財産を取り戻す管財人の権限です。破産法第160条から第162条などに要件が定められています。

名義変更(贈与)は「無償行為」として否認される

家を配偶者や子どもに贈与して名義を移す行為は、対価のない無償行為です。破産法第160条第3項は、支払の停止や破産申立ての後、またはその前6か月以内にした無償行為は、相手方の認識を問わず否認できると定めています。

6か月より前の贈与でも、債権者を害すると知ってした行為なら第160条第1項で否認される可能性があります。「昔のことだから大丈夫」とは限らないため、過去の名義変更も申立て前に弁護士へ伝えておきましょう。

親族への安値売却、適正価格でも危ないケース

時価より大幅に安い価格で親族に売る行為は、差額分だけ債権者に配る財産を減らします。債権者を害することを知ってした行為として否認の対象になり得ます(第160条第1項)。

具体例

時価2,000万円の家を親族に500万円で売った場合

  • 時価2,000万円 − 売却価格500万円 = 1,500万円分、債権者に配るはずの財産が減る
  • → 管財人が否認すれば、家(または価額)を破産財団に取り戻される
  • → 破産者自身も、財産を不利益に処分した行為として免責不許可事由に当たり得る

親族は代金を払ったのに家を失う可能性があり、家族間の負担がかえって大きくなります。

適正価格で売った場合でも安心はできません。売却代金を隠すなどの意思があり、相手もそれを知っていた場合は否認できると定められており、相手が破産者の親族や同居者なら、その意思を知っていたと推定されます(第161条)。

免責不許可・詐欺破産罪につながる行為

債権者を害する目的で財産を隠したり、債権者に不利益な処分をしたりすることは、免責不許可事由です(第252条第1項第1号)。法テラスも、免責決定がされない例として財産を不当に安く手放すことや、家族などだけへの偏った返済を挙げています(法テラス 免責決定がされない場合)。

さらに悪質な場合は詐欺破産罪として、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科され得ます(第265条)。事情を知って財産の処分の相手方になった人も同様に処罰の対象となり得る点は、親族にも関わる問題です。

  1. 破産前に家を名義変更・安値売却家族を守るつもりでも
  2. 管財人が調査・否認家や価額を財団へ取り戻す
  3. 免責不許可・刑事責任のおそれ借金が残るうえ親族にも影響
図:破産前の名義変更・安値売却が招く流れ
結論

破産を考え始めたら、家の名義変更・親族への売却・家族への返済はすべて弁護士に相談してからにしてください。裁判所は事情を考えて免責を認めることもありますが(第252条第2項)、それを当てにした行動は避けるべきです。

自己破産の流れと、家を手放すまでの生活

結論

申立てから免責確定までは、管財人による家の売却と並行して進みます。手続中は裁判所の許可なく転居できないなど、家の扱い以外にも守るべきルールがあります。

家がある自己破産では、管財人による売却の進み具合に合わせて引越しの時期が決まっていきます。全体の流れを先に把握しておくと、引越しや家族への説明の段取りが立てやすくなります。

申立てから免責確定までの流れ

申立ては、住所地または居所を管轄する地方裁判所にします。個人が破産を申し立てると、原則として同時に免責許可の申立てもしたものとみなされます(破産法第248条第4項)。

  1. 申立て地方裁判所に申立書と資料を提出
  2. 破産手続開始決定・管財人選任家の管理処分権が管財人へ移る
  3. 家の売却(換価)と配当任意売却には裁判所の許可が必要
  4. 免責許可決定の確定官報掲載から2週間で確定
図:家がある自己破産(管財事件)の大まかな流れ

法テラスの解説では、免責許可決定が官報に掲載されてから2週間が経過した時点で決定が確定するとされています。確定して初めて、売却で返しきれなかった住宅ローンなどの支払い責任がなくなります。

手続中の制限:転居の許可・官報への掲載

破産者は、裁判所の許可を得なければ居住地を離れることができません(破産法第37条)。家の売却に伴う引越しも、申立てを依頼した弁護士や管財人を通じて手続きを確認しながら進めます。

破産法の公告は官報で行われ(第10条)、住所・氏名が官報に掲載されます。法テラスは、職場や近所の人が債権者であれば裁判所から通知が届くため、知られる可能性があるとしています。

  • 住宅ローンの連帯保証人・連帯債務者に家族がいないか
  • 家の名義(単独か共有か)と、他の担保権の有無
  • 直近6か月以内などに、家や預金を家族に移していないか
  • 固定資産税など免責されない滞納がないか
  • 引越し先と転居時期を、弁護士・管財人と相談したか

共有名義の家、家族が住み続けたい場合

夫婦の共有名義の家なら、破産財団に入るのは破産者の持分だけです。破産法第52条は、共有者の1人が破産した場合に分割請求ができること、そして他の共有者は相当の償金を払って破産者の持分を取得できることを定めています。共有関係の解消については共有物分割請求の記事も参考になります。

家族が住み続けたい場合も、ポイントは「適正な対価を払い、正式な手続きで取得する」ことです。否認の対象になるのは、破産者が手続開始前にした財産の処分や特定の債権者への返済などです(第160条〜第162条)。破産前にこっそり名義を移すのではなく、管財人が裁判所の許可を得て行う売却の場で買い受ける形なら、こうした問題は起こりにくいと考えられます。ただし、誰にいくらで売るかを決めるのは管財人と裁判所で、抵当権が付いていれば抵当権者の同意も必要になるため、家族が希望すれば必ず買い受けられるわけではありません。

POINT

家族が家を引き取るなら「正規のルート」で

  • 買い受けは管財人の売却手続の中で、適正価格を払って行う
  • 相場の根拠として、複数社の査定額を把握しておく
  • 家族自身も住宅ローンが組めるか、資金計画を先に確認する

家族に買い手がいない場合に、不動産会社などに家を売って賃料を払いながら住み続けるリースバックが挙がることもあります。ただ、手続開始後に家を売れるのは管財人だけで、開始前に相場より安く売れば否認の対象になり得る点は家族への売却と同じです。国土交通省の住宅のリースバックに関するガイドブックは、定期借家契約では期間満了で契約が終わり、貸主が再契約を拒めば退去が必要になると注意を促しています。同省が令和2年度に事業者39社に行った調査では、買取価格が周辺相場の「7割以下」という回答が50%でした。検討するなら、必ず弁護士・管財人に相談してからにしてください。

よくある質問

自己破産すると、家族名義の家や家族の財産も処分されますか?

処分されません。自己破産は申立人本人についての手続きで、家族の財産が処分されたり、家族の仕事が制限されたりすることはありません。

ただし本人と家族の共有名義の家は、本人の持分が破産財団に入ります。また、破産前に本人の家を家族名義に移していた場合は、管財人に否認されて取り戻されることがあります。

住宅ローンだけ払い続けて、他の借金を自己破産できますか?

自己破産では、特定の債権者だけに返済すると偏頗弁済として否認されたり、免責不許可事由に当たったりするおそれがあります。家は管財人が売却するのが原則です。

住宅ローンを払い続けて家を残したい場合は、個人再生の住宅資金特別条項を使えるか弁護士に確認してください。

家を売っても残った住宅ローンは、免責後も払う必要がありますか?

免責許可の決定が確定すれば、破産者本人は残った住宅ローンを支払う責任を免れます。ただし連帯保証人や連帯債務者への請求は残ります。

また、固定資産税などの税金や養育費は免責されない債権として法律に定められているため、滞納分は免責後も支払う必要があります。

自己破産の手続中に引越しをしてもよいですか?

破産者は、裁判所の許可を得なければ居住地を離れることができません(破産法第37条)。家の売却に伴う引越しであっても、勝手に転居せず、申立てを依頼した弁護士や破産管財人を通じて許可の手続きを確認してから進めてください。

この記事のまとめ

  • 自己破産では家の処分権が破産管財人に移り、家は売却されて配当に回る
  • 抵当権者は別除権で競売でき、残ったローンは免責されても連帯保証人には請求が残る
  • 家を残したいなら、任意整理か個人再生の住宅資金特別条項を先に検討する
  • 破産前の任意売却は、適正価格と代金の使い道を弁護士と決めてから進める
  • 名義変更や親族への安値売却は、否認・免責不許可・詐欺破産罪のリスクがある
  • 手続中は転居に裁判所の許可が必要で、官報に住所・氏名が載る

どの手続きを選ぶにしても、判断の土台になるのは「家が今いくらで売れるか」です。まず現在の価格を知り、弁護士との相談に役立ててください。

この記事を書いた人

売却ナビット編集部(運営:合同会社GREA)
不動産の一括査定サービス「売却ナビット」を運営。相続・老朽化・投資物件など、売りにくい不動産の売却相談を扱っています。
〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル6階/TEL 03-5615-9793(10:00〜18:00 年中無休・年末年始を除く)
記事内の税制・法令に関する記述は、国税庁・法務省・国土交通省などの公表情報をもとに作成しています。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください。

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