借金で家を売却するか迷ったら|残債・任意売却・債務整理と税金

借金返済のために家を売却するときの残債の確認・任意売却・債務整理・税金を解説する記事のイメージ

カードローンや事業の借入れ、住宅ローンの返済が重くなり、「家を売ればなんとかなるのでは」と考え始めた方は少なくありません。ただ、売れば必ず借金がなくなるわけではなく、売り方を間違えると借金だけが残ることもあります。

結論から言うと、最初にやるべきことは家の売却手取りと住宅ローン残債を比べることです。売却手取りが残債を上回るか下回るかで、取れる手段がまったく変わります。下回る場合は任意売却や債務整理も含めて比較が必要です。

また、家を売ったあとの税金は、マイホームなら3,000万円特別控除などでゼロになることが多い一方、確定申告が必要です。判断の順番と数字の見方を、ここで一通り押さえてください。

この記事を読むとわかること

  • 借金返済のために家を売るべきかを決める3つの数字
  • アンダーローン・オーバーローン別の売り方と、任意売却の流れ
  • 任意整理・個人再生・自己破産と家の売却の違い
  • 売却後も住み続けるリースバックの仕組みと注意点
  • 家を売ったときの税金と、損が出たときに使える特例

この記事の結論

  1. まず売却手取り(売却価格−諸費用)と住宅ローン残債を比べます。手取りが上回るアンダーローンなら通常の売却で完済でき、残りを他の借金の返済に回せます。
  2. 手取りが残債を下回るオーバーローンで差額を用意できないときは、債権者の同意を得て売る任意売却が選択肢です。競売より高値が期待でき、引渡し時期も調整しやすくなります。
  3. 家を残したいなら個人再生の住宅資金特別条項という方法があります。ただし保証会社の代位弁済から6か月を過ぎると使えません。売る前に弁護士へ相談してください。
  4. マイホームの売却益は最高3,000万円まで控除できます。住宅ローン残高を下回る価額で売って損が出たときは、所有5年超などの要件で給与などと損益通算できます。
  5. リースバックは住み続けられる代わりに家賃がかかり、買戻しは当然の権利ではありません。売却価格と家賃総額を必ず比べてください。

借金返済のために家を売るべきか|判断の基準

結論

家を売るかどうかは、売却手取り・住宅ローン残債・住宅ローン以外の借金の3つの数字で決まります。売っても生活が立て直せないなら、売る前に債務整理と比べるのが順番です。

「借金があるから家を売る」という判断は、一度実行すると元に戻せません。家を手放したあとも借金が残り、さらに家賃の支払いが加わって生活が苦しくなる、という状態はできるだけ避けたいところです。

そこで、売却を決める前に「売ったら借金はいくら減るのか」「売らずに借金を減らす方法はないか」を並べて比べます。この記事では、その比べ方を順番に説明します。

売却を考えてよいケース・先に別の手を考えるケース

売却が現実的な解決策になりやすいのは、家の売却手取りが住宅ローン残債を上回り、余ったお金で他の借金も返せるケースです。家を手放す代わりに借金がなくなり、生活の立て直しがはっきり見えます。

反対に、売っても住宅ローンすら返しきれず、カードローンなども丸ごと残るケースでは、家を売るだけでは解決しない可能性があります。この場合は任意売却と債務整理を合わせて検討します。

  • 売却手取りで住宅ローンを完済でき、さらに他の借金も返せる → 通常の売却を検討
  • 住宅ローンは返せるが他の借金が残る → 売却+任意整理などを比較
  • 住宅ローンも返しきれない → 任意売却・個人再生・自己破産を弁護士と比較
  • 家族のために家だけは残したい → 個人再生の住宅資金特別条項やリースバックを確認

最初に確認する3つの数字

判断に必要な数字は3つだけです。1つ目は家がいくらで売れるか(査定額)、2つ目は住宅ローンの残高、3つ目は住宅ローン以外の借金の合計です。

住宅ローンの残高は、金融機関から届く返済予定表や残高証明書で確認できます。住宅ローン以外の借金は、カードローン・消費者金融・親族からの借入れまで、漏れなく書き出してください。査定額は1社だけでなく複数社で比べるのが前提です。

POINT

数字がそろうまで契約しない

  • 査定額が分からないまま「すぐ買います」という話に乗らない
  • 住宅ローン以外の借金も含めた総額で判断する
  • 税金や家賃など、売ったあとに出ていくお金も足し合わせる

滞納が始まる前に動くほど選択肢が多い

住宅ローンの返済が苦しくなった段階なら、まず借入先の金融機関に返済方法の変更を相談できます。住宅金融支援機構も、ご返済についての具体的な相談や申請は返済中の金融機関に問い合わせるよう案内しています。

一方、滞納が続いて保証会社がローンを肩代わりする段階に進むと、後で説明するように個人再生で家を残す道に期限がつきます。売るにしても残すにしても、滞納が長引く前に動くほど有利です。

アンダーローンかオーバーローンかで売り方が決まる

結論

売却手取りが残債を上回るアンダーローンなら通常の売却で完済できます。下回るオーバーローンは、差額を自分で用意しない限り抵当権を外せません。

住宅ローンを借りている家には、通常、金融機関の抵当権が設定されています。買主は抵当権が付いたままの家は買わないため、売るには引渡しまでにローンを返して抵当権を抹消する必要があります。

用語の補足:抵当権

お金を貸した金融機関が、返済が止まったときに家を売って優先的に回収できるようにしておく権利です。登記簿に記録され、ローンを完済すると抹消の手続をします。

売却手取りと残債の比べ方

比べるのは「売却価格」ではなく、売却価格から仲介手数料や登記費用などの諸費用を差し引いた売却手取りです。売却価格だけで比べると、決済の場で数十万円から百万円単位の不足が出ることがあります。

項目 アンダーローン オーバーローン
状態 売却手取り ≧ 残債 売却手取り < 残債
抵当権の抹消 売却代金で完済して抹消 差額を自己資金で払うか、債権者の同意が必要
主な売り方 通常の仲介・買取 差額を払っての売却/任意売却
売却後の借金 住宅ローンは消える 差額が借金として残る

※「売却手取り」は売却価格から仲介手数料・抵当権抹消の登記費用などの諸費用を差し引いた金額です。

具体例

住宅ローン残債2,300万円の家を売る場合

  • 前提:住宅ローン残債2,300万円。諸費用は仮に売却価格の約4%とする
  • → 2,500万円で売れた場合:手取り約2,400万円−残債2,300万円=約100万円が手元に残る(アンダーローン)
  • → 2,000万円で売れた場合:手取り約1,920万円−残債2,300万円=約380万円不足(オーバーローン)

同じ家でも、いくらで売れるかで「借金が消える売却」か「借金が残る売却」かが分かれます。査定額の幅を先に知ることが判断の出発点です。

アンダーローンなら通常の売却で完済できる

アンダーローンなら、決済日に買主から受け取った代金で住宅ローンを一括返済し、同時に抵当権を抹消します。余ったお金は自由に他の借金の返済に回せます。

この場合は債権者の同意も不要で、普通の売却と変わりません。売り急いで相場より安く売ると、他の借金に回せる額が減るだけなので、売却期間に余裕があるなら仲介でじっくり買主を探すのが基本です。

オーバーローンなら差額をどう埋めるか

オーバーローンでも、預貯金や親族からの援助で差額を用意できれば、通常の売却と同じように完済・抹消できます。差額が用意できない場合に初めて、任意売却という方法を検討します。

投資用マンションのオーバーローン売却については投資用マンションのオーバーローン売却の記事で詳しく解説しています。自宅でも、抵当権抹消の仕組みは同じです。

注意

差額を埋めるために新たにカードローンなどで借りるのは避けてください。住宅ローンが高金利の無担保ローンに置き換わるだけで、返済がさらに苦しくなるおそれがあります。

この項目のまとめ
  • 比べるのは売却価格ではなく、諸費用を引いた売却手取り
  • アンダーローンなら完済して余りを他の借金へ
  • オーバーローンで差額を用意できなければ任意売却を検討

差額を払えないなら任意売却|競売との違いと流れ

結論

任意売却は、債権者の同意を得てオーバーローンの家を通常の市場で売る方法です。競売より高値が期待でき、引渡し時期も調整しやすいのが利点ですが、残った借金は消えません。

住宅ローンの返済が止まったまま放置すると、最終的には債権者が裁判所に申し立てて家を競売にかけます。任意売却は、その前に自分で買主を見つけて売る手段です。

任意売却と競売の違い

住宅金融支援機構は、任意売却は通常の不動産取引として売買されるため、一般的に競売より高値で売却できることが期待されるとしています(住宅金融支援機構 融資住宅等の任意売却)。

また、裁判所の手続である競売と比べると、自宅の引渡時期の調整がしやすく、退去後の生活設計が立てやすいとも説明しています。引越し先を決めてから家を明け渡せるかどうかは、生活再建に大きく影響します。

任意売却の手続の流れ

住宅金融支援機構が示している任意売却の流れは次のとおりです。ポイントは、債権者が売出価格と抵当権抹消を承認してから売買契約に進むことです。

  1. 申出・業者選定自分で仲介業者を選び、申出書を提出
  2. 査定・売出価格の確認債権者が承認した価格で売り出す
  3. 販売活動専任媒介契約または専属専任媒介契約を結び買主を探す
  4. 抹消応諾の審査債権者の承諾後に売買契約
  5. 決済・抹消代金決済と抵当権抹消
図:任意売却の主な流れ(住宅金融支援機構の案内をもとに作成)

同機構は、確認していない価格で売り出して購入希望者を見つけても、抵当権抹消に応じられない場合があると注意しています。債権者の承認前に買主と話を進めないことが大切です。

売却後に残った借金はなくならない

任意売却で返しきれなかった住宅ローンは、売却後も借金として残ります。残った借金の返済については、債権者と相談することになります。

住宅金融支援機構は、手続に協力した場合、状況により売却代金から仲介手数料や抹消登記費用などを控除できる場合があり、残債務の状況などにより延滞損害金減額の相談に応じられる場合があるとしています。残った借金も返せない見込みなら、次の章の債務整理と組み合わせて考えます。

POINT

任意売却で押さえる3点

  • 売出価格と売買契約は、債権者の承認を得てから進める
  • 競売より引渡し時期を調整しやすく、退去後の計画を立てやすい
  • 残った借金は消えないので、返済計画か債務整理が別に必要

投資用物件を含めた任意売却の期限や入居者対応は、任意売却の流れと期限の記事でも整理しています。

売る前に債務整理と比べる|任意整理・個人再生・自己破産

結論

家を残したいなら個人再生、家を手放してでも借金をゼロにしたいなら自己破産、家を売れば返せるなら売却が基本です。個人再生で家を残す道には、代位弁済から6か月という期限があります。

借金の悩みを解決する方法は、家を売ることだけではありません。法律で定められた債務整理の手続を使えば、家を残したまま借金を減らせる場合もあります。売却は元に戻せないので、先にこちらと比べてください。

3つの債務整理と家の売却の違い

法テラス(日本司法支援センター)の弁護士による資料では、自己破産は負債をゼロにする手続(免責)、個人再生は負債を圧縮して返済する手続、任意整理は業者との交渉で返済額を減らし返済期間を延ばす方法と整理されています。

横にスクロールできます

方法 借金の扱い 家 裁判所
家の売却(通常・任意売却) 売却代金で返済。足りない分は残る 手放す 不要
任意整理 交渉で返済額を減らし、返済期間を延ばす 住宅ローンを払い続ければ残せる 不要
個人再生 圧縮して返済(原則100万円か負債の5分の1の多い方など) 住宅資金特別条項で残せる場合あり 必要
自己破産 免責で原則ゼロ(税金などは残る) 破産財団として処分される 必要

※個人再生の弁済額は債権総額などで変わります。手続の選択は必ず弁護士・司法書士に相談してください。

個人再生で家を残すための条件と期限

個人再生には、住宅ローンを払い続けながら他の借金だけを圧縮する住宅資金特別条項があります。民事再生法では、対象の「住宅」を、本人が所有し、床面積の2分の1以上を専ら自分の居住用にしている建物と定めています(e-Gov法令検索 民事再生法)。

また、住宅に住宅ローン以外の担保権が付いていると原則として使えません。小規模個人再生を使えるのは、住宅ローンなどを除いた借金の総額が5,000万円を超えない人です。

  1. 住宅ローンの滞納返済が止まり、督促が続く
  2. 保証会社が代位弁済保証会社が保証債務を履行してローンを肩代わり
  3. 代位弁済から6か月この日までに個人再生を申し立てないと住宅資金特別条項が使えない
図:個人再生で家を残すための期限(民事再生法198条2項)

民事再生法は、保証会社が保証債務を全部履行した日から6か月を経過する日までに申立てがあった場合に、住宅資金特別条項を定められるとしています。家を残したいなら、売却を決める前に弁護士へ相談してください。

自己破産では家は手放す前提になる

破産法は、破産者が手続開始の時に持っている一切の財産を破産財団とすると定めています(e-Gov法令検索 破産法)。家も原則として処分され、債権者への配当に回ります。

また、免責が確定しても税金などの租税等の請求権は免除されません。固定資産税や住民税の滞納がある場合は、家の売却代金や今後の収入で払う計画も必要です。

破産を考えているなら、売り方と返し方に注意

自己破産を考えている段階で家を売るときは、売った代金の使い道と、売る相手・価格に注意が必要です。破産手続が始まると、破産管財人は破産前の一定の行為を「否認」して、売った財産や返したお金を取り戻せます(破産法第160条〜第162条)。

  • 相場より大幅に安く親族などへ売る → 債権者を害する行為として否認されうる(第160条)
  • 代金を隠すつもりで売り、買主もそれを知っていた → 相当な価格で売っても否認されうる(第161条)
  • 支払不能になった後に、親族や知人など一部の債権者にだけ返す → 偏った返済として否認されうる(第162条)

さらに、財産の隠匿や債権者に不利益な処分、特定の債権者に特別の利益を与える目的の返済は、免責が許可されない事由として定められています(破産法第252条第1項第1号・第3号)。破産を視野に入れているなら、売る前に弁護士へ相談し、売却代金の扱いを決めてから進めてください。

POINT

相談先は法テラスや弁護士会でも探せる

  • 法テラスでは、資力基準などの要件を満たせば1つの案件について3回まで無料で法律相談を受けられる
  • 弁護士が受任通知を送ると、債権者からの督促は原則止まる
  • 売却か債務整理かは、家の査定額を持って相談すると話が早い
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売却後の住まい|住み替えとリースバック

結論

売却後は賃貸への住み替えが基本です。住み続けたい場合はリースバックもありますが、家賃の総額と売却価格を比べ、契約の種類を確認してから選んでください。

家を売ると決めたとき、多くの人がいちばん不安に思うのが「どこに住むか」です。通常の売却でも引越しのタイミングは調整でき、住み続けたい場合はリースバックという方法もあります。

通常の売却でも引渡し時期は調整できる

国土交通省のガイドブックは、自宅に住みながら資金を得る方法として、リースバックのほかに通常の売却で決済・引渡し時期を事業者と調整する方法を挙げています。契約後、一定期間住み続けることも可能だとしています。

次の住まいの契約に必要な初期費用は、売却代金が入る前に必要になることがあります。借金の返済に全額を回す前に、引越し費用と当面の生活費を計算に入れてください。

リースバックの仕組みと注意点

リースバックは、住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住むサービスです(国土交通省 住宅のリースバックに関するガイドブック)。

同ガイドブックは、定期借家契約では期間満了で契約が終わり、貸主が再契約を拒めば退去が必要になると注意しています。また、宅建業者への売却にはクーリング・オフが適用されず、違約金が設定されていることも多いとしています。

具体例

1,800万円で売って月12万円の家賃を払う場合

  • 前提:リースバックで自宅を1,800万円で売却し、家賃は月12万円(年144万円)
  • → 1,800万円÷144万円=12.5年で、払った家賃の合計が売却価格に並ぶ
  • → 売却代金を借金の返済に使った場合、家賃は毎月の収入から払い続ける必要がある

ガイドブックも「売却で受け取る金額」と「数年かけて賃料として支払う金額」を自分で計算して比べるよう勧めています。住み続けたい年数で計算してください。

リースバックのメリット・デメリット

借金返済のためのリースバックは、売却代金を返済に回したうえで家賃の支払いが始まるため、毎月の収支が成り立つかどうかが最大の判断材料です。

メリット

  • 引越しをせず、住み慣れた家に住み続けられる
  • まとまった資金を一括で受け取れる
  • 契約条件によっては固定資産税などの負担がなくなる

デメリット

  • 毎月の家賃がかかり、値上げの可能性もある
  • 定期借家契約だと希望どおりの期間住めないことがある
  • 買戻しは当然の権利ではなく、条件次第
注意

住宅ローンが売却価格を上回るオーバーローンの家は、売却代金でローンを完済できないため、債権者の同意がなければリースバックでも抵当権を外せません。まず残債との比較を済ませてください。

家を売ったときの税金|利益が出た場合・損が出た場合

結論

マイホームの売却益は最高3,000万円まで控除できるため、税金がかからないことが多いです。損が出た場合も、条件を満たせば給与などと損益通算できます。どちらも確定申告が必要です。

借金返済のために売るとき、税金で手残りが減ると返済計画が狂います。売却益(譲渡所得)には税金がかかりますが、マイホームには大きな特例があり、損が出たときに税金を取り戻せる特例もあります。

利益が出てもマイホームなら3,000万円控除がある

国税庁によると、マイホームを売ったときは所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます(国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例)。住まなくなった家は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。

特例が使えない場合の税率は、売った年の1月1日時点で所有5年超の長期譲渡所得なら所得税15%・住民税5%、5年以下の短期なら所得税30%・住民税9%です(国税庁 No.3208)。これに復興特別所得税が加わります。

具体例

1,500万円で買った自宅を2,800万円で売った場合

  • 前提:取得費1,500万円、譲渡費用100万円、所有10年の自宅(長期)
  • → 譲渡所得:2,800万円−(1,500万円+100万円)=1,200万円
  • → 3,000万円控除を使う場合:1,200万円−3,000万円で課税所得0円
  • → 控除が使えない場合:1,200万円×20.315%=243万7,800円

住まなくなって何年も経った家や親族への売却では控除が使えず、借金返済に回せる額が大きく変わります。売る前に要件を確認してください。

所有期間が5年以下の家を売る場合の税率差や判定日の数え方は、短期譲渡所得の記事で詳しく解説しています。

ローン残高を下回る価格で売って損が出たとき

住宅ローンが残るマイホームを、ローン残高を下回る価額で売って譲渡損失が出た場合、一定の要件を満たせばその損失を給与所得などから差し引けます(国税庁 No.3390)。控除しきれない分は翌年以後3年間繰り越せます。

主な要件は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること、売買契約日の前日に償還期間10年以上の住宅ローン残高があることなどです。国税庁のページ(令和8年4月1日現在法令等)では、令和9年12月31日までの売却が対象とされています。損益通算できる上限は「住宅ローン残高−売却価額」です。

具体例

ローン残高2,800万円の自宅を2,200万円で売った場合

  • 前提:所有12年の自宅。計算上の譲渡損失は1,000万円、売買契約日の前日の住宅ローン残高は2,800万円
  • → 損益通算の限度額:2,800万円−2,200万円=600万円
  • → 譲渡損失1,000万円のうち、給与などと通算・繰越しできるのは600万円まで

オーバーローンで売ると借金は残りますが、払った所得税・住民税の一部が戻る可能性があります。確定申告を忘れないでください。

競売など強制換価手続による譲渡は非課税になる場合がある

国税庁は、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な場合に、競売や破産手続などの強制換価手続で資産を譲渡した所得は所得税が課税されないとしています(国税庁 No.3105 譲渡所得が課税されないもの)。

強制換価手続の執行が避けられないと認められる場合の譲渡で、譲渡代金の全部が債務の弁済に充てられたものも対象です。資力喪失は、信用や才能などを活用しても債務を返す資金を調達できず、近い将来も調達できない状態をいい、譲渡時の現況で判定されます。任意売却で使えるかは個別判断なので、税務署か税理士に確認してください。

結論

借金返済のための売却でも、税金は「利益が出たか・損が出たか」で決まります。利益なら3,000万円控除、損ならローン残高を限度に損益通算。どちらも確定申告をしないと使えません。

借金返済のための売却を確実に進める|仲介と買取

結論

査定で数字をそろえ、金融機関と専門家に相談してから売り方を決めます。時間に余裕がなければ、価格は下がっても早く確実な買取も比べるのが現実的です。

借金返済のための売却は、時間との勝負になりがちです。焦って最初に声をかけてきた業者と契約するのではなく、手順を踏んで比べることで、手残りと生活再建の見通しが大きく変わります。

相談する順番

相談先を間違えると、使えたはずの選択肢を失うことがあります。家の価格を知る→借入先に相談→必要なら弁護士の順に進めると、無駄がありません。

  1. 査定で売却価格の幅を知る複数社の査定で、手取りが残債を上回るかを確認します。
  2. 住宅ローンの借入先に相談する返済方法の変更ができないか、売る場合の手続はどうなるかを聞きます。
  3. 借金の全体像を弁護士・司法書士に相談する売却と債務整理のどちらが合うかを、査定額を持って相談します。
  4. 売り方と引渡し時期を決める仲介か買取か、任意売却かを決め、住み替え先と引越し時期を固めます。
  5. 売却翌年に確定申告する3,000万円控除や損益通算の特例を使う場合は申告が必要です。

時間がないときは買取も比べる

仲介は市場で買主を探すため高く売れる可能性がありますが、いつ売れるかは分かりません。不動産会社が直接買い取る買取は、価格は仲介より低くなりやすい一方、条件が合えば短期間で現金化できます。

返済期限が迫っている、競売の手続が進んでいるなど時間に余裕がない場合は、仲介の見込み価格と買取価格の差額を、待つ期間のコストと比べて判断します。任意売却の場合は、買取でも債権者が抵当権抹消に応じることが前提です。

業者選びで避けたいこと

借金に困っている状況では、冷静な判断がしにくくなります。次のような点に当てはまる業者とは、契約を急がないでください。

  • 査定額の根拠を説明せず、すぐに売買契約を結ばせようとする
  • 任意売却で、債権者の承認前に買主と契約を進めようとする
  • リースバックで、賃貸借の契約の種類や買戻しの条件を書面で示さない
  • 他社の査定と比べることを嫌がる

国土交通省のガイドブックも、売却価格を提示されたら相場から大きく外れていないかを事業者に聞き、他の宅建業者からも意見を聞くよう勧めています。比べること自体が、身を守る一番の方法です。

よくある質問

家を売っても借金が残った場合はどうなりますか?

売却代金で返しきれなかった借金は、売却後も返済義務が残ります。任意売却では残った債務について債権者と相談することになり、住宅金融支援機構は残債務の状況などにより延滞損害金減額の相談に応じられる場合があるとしています。

それでも返済が難しいときは、個人再生や自己破産などの債務整理を弁護士に相談してください。

親や兄弟に家を買ってもらえば、税金の特例は使えますか?

親子や夫婦など「特別の関係がある人」への売却は、マイホームの3,000万円特別控除の対象外です。生計を一にする親族や、売った後にその家で同居する親族への売却も含まれます。親族に買ってもらう場合は、利益が出たときの税額を事前に計算し、住宅ローンが残っていれば金融機関の同意も得てから進めてください。

カードローンなど住宅ローン以外の借金を返すために家を売っても、3,000万円控除は使えますか?

使えます。3,000万円特別控除はマイホームを売ったことに対する特例で、売却代金を何に使うかは要件になっていません。所有期間の長短も問いません。ただし、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどの要件があり、適用には確定申告が必要です。

自己破産すれば税金の滞納もなくなりますか?

なくなりません。破産法は、免責許可の決定が確定しても租税等の請求権については責任を免れないと定めています。固定資産税や住民税の滞納は自己破産後も残るため、家の売却代金で優先して清算できるかどうかも含めて、弁護士に相談しながら進めてください。

リースバックで売った家は、あとで買い戻せますか?

必ず買い戻せるとは限りません。国土交通省のガイドブックは、買戻しは当然の権利ではなく、一度家を買った事業者が条件次第でもう一度売るという約束ごとだとしています。

買い戻したい場合は、いつまでに・いくらで買い戻せるかが契約書に具体的に書かれているかを、契約前に確認してください。

この記事のまとめ

  • 売るかどうかは、売却手取り・住宅ローン残債・他の借金の3つの数字で判断する
  • アンダーローンなら通常の売却で完済し、余りを他の借金の返済に回せる
  • オーバーローンで差額を払えないなら、債権者の同意を得る任意売却を検討する
  • 家を残したいなら個人再生の住宅資金特別条項。代位弁済から6か月が期限
  • リースバックは家賃総額と契約の種類、買戻し条件を契約前に確認する
  • 利益が出たら3,000万円控除、損が出たら損益通算。どちらも確定申告が必要

どの選択肢を取るにしても、出発点は「家がいくらで売れるか」です。まず現在の価格を知ることから始めてください。

この記事を書いた人

売却ナビット編集部(運営:合同会社GREA)
不動産の一括査定サービス「売却ナビット」を運営。相続・老朽化・投資物件など、売りにくい不動産の売却相談を扱っています。
〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル6階/TEL 03-5615-9793(10:00〜18:00 年中無休・年末年始を除く)
記事内の税制・法令に関する記述は、国税庁・法務省・国土交通省などの公表情報をもとに作成しています。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください。

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