収入が減った、病気で働けなくなった、教育費が重なった——住宅ローンの引き落としが近づくたびに不安になっていませんか。「このまま払えなくなったら家はどうなるのか」「誰に相談すればいいのか」が分からず、動けないまま時間だけが過ぎていく方は少なくありません。
結論から言うと、住宅ローンが払えないと感じたら、滞納する前に借入先の金融機関へ相談するのが最優先です。滞納前なら返済条件の変更・売却して完済・任意売却のどれも選べますが、滞納が続いて競売に進むほど選択肢は減っていきます。
この記事では、相談先ごとにできること、フラット35の返済方法変更の具体的な要件、滞納から競売までの流れ、そして状況を悪化させてしまう「やってはいけないこと」を順番に整理します。
この記事を読むとわかること
- 住宅ローンが払えないときの相談先と、相談前に整理しておく数字
- 金融機関の返済条件変更と、住宅金融支援機構の返済方法変更の要件
- 滞納から期限の利益喪失・競売・引渡しまでの大まかな流れ
- 任意売却と、滞納前に売却してローンを完済する方法の違い
- 名義変更や借金での穴埋めなど、やってはいけない行動
この記事の結論忙しい方はここだけ
- 最初の相談先は借入先の金融機関。返済期間の延長や一定期間の減額など、返済条件の変更を相談できます。
- フラット35など住宅金融支援機構のローンは、返済期間を最長15年延長(完済時80歳まで)でき、失業中や収入20%以上減の場合は元金据置を最長3年設定できます。手数料は不要です。
- 滞納を放置すると、一括返済の請求→競売の申立て→入札→引渡しへと進みます。競売は所有者の意思にかかわらず強制的に売却される手続きです。
- 返済の継続が難しいなら、競売の前に任意売却を検討します。滞納前で売却価格がローン残高を上回るなら、通常の売却で完済するのが最も負担の少ない出口です。
- 家族への名義変更・財産隠し・特定の人だけへの返済は、自己破産の免責不許可事由に当たるおそれがあります。
住宅ローンが払えないときの相談先|最初は借入先の金融機関
最初に連絡すべきは、ローンを返済している金融機関です。返済条件の変更も任意売却も、まず借入先の判断がなければ進みません。
住宅ローンの返済に困ったとき、相談先はいくつかありますが、どの手段を選ぶにしても借入先(債権者)の同意や審査が関わります。住宅金融支援機構も、返済中の方向けのページで、具体的な相談や申請は返済中の金融機関へ問い合わせるよう案内しています。
相談は「滞納する前」がいちばん選択肢が多い
返済条件の変更は、変更後の返済を続けられることが前提です。住宅金融支援機構も、返済方法変更の利用にあたっては変更中と変更期間終了後の返済継続が可能かを確認するとしています。
まだ一度も遅れていない段階なら、家計の見通しを示して条件変更を相談できますし、売却して完済する時間的な余裕もあります。滞納が始まってからでは、相談できる内容が「どう返してもらうか」から「どう回収するか」に変わっていきます。
相談先ごとにできることの一覧
状況によって、頼るべき窓口は変わります。返済を続けたいなら金融機関、続けられないなら売却や債務整理の専門家という分け方が基本です。
横にスクロールできます
| 相談先 | 相談できること | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 借入先の金融機関 | 返済期間の延長、元金据置、一定期間の減額、ボーナス返済の見直し | 収入減が一時的で、条件を変えれば返済を続けられる |
| 住宅金融支援機構 | フラット35などの返済方法変更の一般的な相談(申請は返済中の金融機関経由) | 機構の住宅ローンを返済している |
| 不動産会社 | 売却価格の査定、売却して完済できるかの確認、任意売却の仲介 | 家を手放してでも返済の負担から抜け出したい |
| 弁護士・法テラス | 個人再生・自己破産などの債務整理、他の借金も含めた整理 | 住宅ローン以外にも借入があり、返済の見通しが立たない |
※実際に選べる手段は、借入先・契約内容・滞納の有無によって異なります。
相談前に整理しておく4つの数字
相談の場で「いくらなら払えるのか」を示せると、話が具体的に進みます。手元の返済予定表や源泉徴収票を見ながら、次の数字を書き出しておきましょう。
- ローンの残高と、毎月・ボーナス時の返済額(返済予定表で確認)
- 前々年と前年の収入額(収入がどれだけ減ったかの根拠になる)
- 住宅ローン以外の借入の残高と毎月の返済額
- 家がいくらで売れそうか(ローン残高を上回るかどうかの目安)
「売ったらいくらか」は返済を続ける場合でも役に立つ
売却価格がローン残高を上回るなら、返済が行き詰まっても売って完済する逃げ道があります。条件変更を選ぶかどうかの判断材料として、早めに把握しておくと安心です。
金融機関に返済条件の変更を相談する
返済期間の延長や元金の据置で毎月の返済額は下げられますが、利息の負担が増えて総返済額は増えます。一時的な収入減をしのぐための手段と考えてください。
民間の銀行などで借りている住宅ローンも、返済が苦しくなったときは条件変更(いわゆるリスケジュール)を相談できます。金融庁は2020年、業界団体との意見交換会で、住宅ローンの条件変更に迅速かつ柔軟に対応するよう金融機関に要請しています。
同じ要請では、住宅ローンの専用ダイヤルや休日も含めた相談窓口の周知も求めています。借入先のウェブサイトや返済予定表に、住宅ローン専用の相談窓口が載っていないか確認してみてください。
返済期間の延長・元金据置・一時的な減額
条件変更の代表的な方法は次の3つです。どれを選べるか、どこまで変えられるかは金融機関の審査と契約内容によって決まります。
- 返済期間の延長:完済までの期間を延ばし、毎月の返済額を下げる
- 元金据置:一定期間、利息だけを支払い、元金の返済を一時的に止める
- 一定期間の減額:決めた期間だけ返済額を下げ、期間終了後に増やして調整する
前述の金融庁の要請文書では、相談があれば審査を行わずに最長1年の元金据置などに応じることとしている金融機関の例も紹介されています。ただしこれは個別の金融機関の取り組みであり、すべての金融機関が同じ対応をするわけではありません。
条件変更は「返済の免除」ではない
条件変更は、返す金額そのものを減らす手続きではありません。毎月の負担を軽くする代わりに、返済期間が延びたり据置期間後の返済額が増えたりするため、総額では支払いが増えるのが通常です。
そのため、「収入がいつ、どの程度まで戻るのか」の見通しが大切です。収入が戻る見込みが立たないまま条件変更を重ねると、据置期間の終了後に再び行き詰まり、結果として家を手放す時期が遅れただけ、ということにもなりかねません。
審査の結果が出るまでの間の返済をどうするかも、相談のときに必ず確認しておきましょう。結果を待つあいだに無断で支払いを止めてしまうと、延滞として扱われるおそれがあります。
フラット35なら住宅金融支援機構の返済方法変更
機構の住宅ローンは、所定の収入基準を満たせば返済期間を最長15年延長でき、失業中や収入20%以上減なら元金据置を最長3年設定できます。手数料はかかりません。
フラット35(買取型)など、住宅金融支援機構の住宅ローンには、返済が困難になった人向けの返済方法の変更メニューが用意されています。民間の条件変更と違い、対象要件と上限が公表されているのが特徴です。
3つの変更メニューと手数料
機構の変更メニューは、目的に応じて3つのタイプがあり、いずれも手数料は不要です。タイプによっては組み合わせることもできます。
| メニュー | 内容 |
|---|---|
| 返済特例(Aタイプ) | 返済期間の延長などで毎月の返済額を減らす。条件により元金据置も可能 |
| 中ゆとり(Bタイプ) | 相談して決めた一定期間だけ、返済額を減らす |
| ボーナス返済の見直し(Cタイプ) | ボーナス返済月の変更、毎月分との内訳変更、ボーナス返済の取り止め |
※Aタイプで元金の支払いの一時休止を希望する場合、Bタイプとの組み合わせはできません。
中ゆとり(Bタイプ)で3年間返済額を減らした場合(機構の掲載例)
- 融資額2,000万円・金利3.00%・35年返済で、4年経過した時点の毎月返済額は76,970円
- 3年間は50,000円に減額 → 毎月26,970円、3年間で約97万円の負担が軽くなる
- 減額期間の終了後は81,436円に増える(減額前より毎月4,466円多い)
子どもの進学費用や入院費など、支出が増える時期が決まっているときに向いた方法です。減額期間後に増える返済額を払えるかまで確かめてから選びましょう。
返済特例(返済期間の延長)の対象要件
返済特例を使えるのは、次の3つすべてに当てはまる人です。収入基準は3つのうちどれか1つを満たせば足ります。
- 経済事情や病気、失業などの事情で返済が困難になっている
- 収入基準のいずれかを満たす:年収が機構への年間総返済額の4倍以下/月収が「世帯人数×64,000円」以下/返済負担率が基準を超え、かつ収入減少割合が20%以上
- 返済方法の変更によって、今後の返済を継続できる
| 年収 | 返済負担率の基準 |
|---|---|
| 300万円未満 | 30% |
| 300万円以上400万円未満 | 35% |
| 400万円以上700万円未満 | 40% |
| 700万円以上 | 45% |
※返済負担率は、機構に加え民間なども含めた住宅ローンの年間総返済額が年収に占める割合。収入減少割合は原則「(前々年の収入-前年の収入)÷前々年の収入」で計算します。
要件を満たすと、返済期間を最長15年延長できます(完済時の年齢上限は80歳)。さらに現に失業中の人や収入が20%以上減った人は、元金の支払いを休んで利息だけを払う元金据置期間を最長3年設定できます。
年収が500万円から400万円に減った場合の判定
- 前々年の収入500万円、前年の収入400万円、住宅ローンの返済は毎月14万円(年168万円)
- 収入減少割合:(500万円-400万円)÷500万円=20%
- 返済負担率:168万円÷400万円=42% → 年収400万円以上700万円未満の基準40%を超える
この場合は収入基準の3つ目を満たし、収入が20%以上減っているので元金据置の対象にもなり得ます。ただし最終的には、変更後に返済を続けられるかを含めた審査で決まります。
申込みから契約までの流れ
機構の返済方法変更は、機構に直接ではなく、返済中の金融機関(融資の申込先)を通じて申請します。審査には一定の時間がかかるので、早めに動き始めることが大切です。
- 返済中の金融機関または機構の支店に相談状況と希望を伝え、おすすめの変更メニューと返済予定額の説明を受けます。
- 返済中の金融機関に申請申請書と、本人(連帯債務者を含む)の前年・前々年の公的な収入証明書などを提出します。
- 金融機関と機構による審査適用できるかどうかが審査され、結果は金融機関から連絡されます。希望どおりにならない場合もあります。
- 変更契約の締結適用が可能な場合、金銭消費貸借契約の変更契約証書と、発行から3か月以内の印鑑証明書などを提出します。
- 機構の変更メニューは3タイプで、いずれも手数料不要
- 返済特例は最長15年延長(完済時80歳まで)、条件により元金据置は最長3年
- 申請は返済中の金融機関経由。延長しても総返済額は増える
滞納から競売までの流れ(概要)
滞納が続くと、分割で返す権利を失って一括返済を求められ、最終的には競売で家が売られます。競売で売れても、返しきれなかったローンは残ります。
ここでは、返済が止まってから家を明け渡すまでの大まかな流れを紹介します。各段階に進む時期は、契約内容や金融機関、裁判所によって異なるため、「何か月でどうなる」と一律には言えません。督促状などの書面が届いたら、記載された期限と連絡先を必ず確認してください。
- 滞納・督促電話や督促状で支払いを求められる
- 一括返済の請求期限の利益を失い、残高全額の返済を求められる
- 保証会社の代位弁済保証会社が代わりに返済し、以後は保証会社が請求
- 競売の申立て・開始決定裁判所が家を差し押さえる
- 入札・売却・引渡し落札者が代金を納め、家を明け渡す
督促から一括返済の請求・保証会社の代位弁済まで
返済が遅れると、まず電話や書面で督促を受けます。それでも滞納が続くと、ローン契約に基づいて分割で返済できる権利(期限の利益)を失い、残高の一括返済を求められます。
期限の利益は、決められた期日までは返済しなくてよいという債務者の権利のことで、これを失うと残高全額を直ちに返す必要が出てきます。代位弁済は、保証会社が債務者に代わって金融機関に返済することです。
保証会社が付いている住宅ローンでは、一括返済に応じられないと、保証会社が金融機関に代わりに返済します。その後は保証会社が、立て替えた分の返済を求める立場になります。
延滞や保証会社による返済(保証履行)は、信用情報にも記録されます。信用情報機関のCICは、異動(延滞・保証履行・破産)の有無を含むクレジット情報を、契約期間中と契約終了後5年間保有するとしています。
競売の申立てから引渡しまで
競売は、債権者の申立てにより裁判所が債務者の不動産を差し押さえて売却し、その代金を返済にあてる手続きです。東京地方裁判所の案内でも、所有者の意思にかかわらず強制的に売却されるものと説明されています。
申立てが認められると裁判所が開始決定を出し、登記簿に「差押」が記録され、債務者に開始決定の正本が送達されます。その後、執行官が家の状況や占有者を調べる現況調査を行い、評価人の評価に基づいて売却基準価額が定められます。
売却は、定められた期間内に入札を受け付け、後日の開札で落札者を決める期間入札で行われるのが一般的です。落札者が代金を納めると所有権が移り、自ら退去しない場合は、落札者の申立てによる引渡命令に基づいて退去を求められます。
競売で売れてもローンは残る
競売では、落札できる最低ラインが決まっています。裁判所の不動産競売物件情報サイト(BIT)によると、入札は売却基準価額から20%を差し引いた買受可能価額以上でなければなりません。
ローン残高2,500万円の家の売却基準価額が2,000万円だった場合
- 買受可能価額:2,000万円×(1-20%)=1,600万円(これ以上なら落札できる)
- 仮に1,700万円で落札された場合、ローン残高との差は2,500万円-1,700万円=800万円
実際には競売の手続費用や遅延損害金も差し引かれるため、残る金額はさらに増えます。自己破産で免責を受けない限り、この残りの返済義務はなくなりません。
その家、売ったらローンを返しきれるか知っていますか?
持ち続けるか、手放すか。判断の前提になるのは「現在の価格」です。
売却するか決めていなくても大丈夫です。
簡単入力60秒・無料。売却ナビットが代わって相談・交渉を行うので、沢山の営業電話の心配はありません。
病気や災害が原因なら、団信と被災者向けの制度も確認
病気やけがで働けなくなったことが原因なら、加入している団体信用生命保険(団信)の内容を確認しましょう。契約によっては、がんなどの特定の病気や働けない状態が続いた場合に保障される特約が付いていることがあります。保険の内容は保険証書や借入先で確認できます。
地震や豪雨などの自然災害が原因なら、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」が使える場合があります。対象は災害救助法の適用を受けた自然災害(東日本大震災を含む)の影響で返済が難しくなった個人です(ガイドラインQ&A)。金融庁の案内チラシでは、次の点が挙げられています。
- まずローンの金額がいちばん多い金融機関に、利用を希望すると連絡する
- 弁護士などの「登録支援専門家」の支援は、国の補助により無料
- 自己破産ではないため、新たな借入れに影響しない
- 家や土地は、専門家が評価した金額を一括または分割で払えば手元に残せる
返済を続けられないなら任意売却で競売を避ける
任意売却は、債権者の同意を得て通常の不動産取引として家を売る方法です。競売より高く売れることが期待でき、引渡しの時期も調整しやすいのが利点です。
ローン残高が売却価格を上回る状態(オーバーローン)では、売っても抵当権を外すだけの返済ができません。そこで、債権者に売却代金での返済を受け入れてもらい、抵当権を抹消してもらって売るのが任意売却です。投資用物件を含めた詳しい進め方は任意売却の流れと期限の記事でも解説しています。
任意売却と競売の違い
住宅金融支援機構は、返済が困難になった場合は任意売却を勧めるとして、その理由を3つ挙げています。競売と比べたときの主な違いは次のとおりです。
任意売却のメリット
- 通常の取引として売るため、一般的に競売より高値が期待でき、負債が減る
- 状況により、売却代金から仲介手数料や抵当権の抹消登記費用などを差し引ける場合がある
- 引渡しの時期を調整しやすく、退去後の生活設計を立てやすい
任意売却の注意点
- 債権者の同意がなければ進められず、売出価格も債権者の確認が必要
- 室内の片付けや内見への協力など、所有者の協力が欠かせない
- 売却代金で返しきれない分の返済義務は残る(破産免責を受けた場合を除く)
任意売却の手続きの流れ
住宅金融支援機構の任意売却の案内では、手続きは次の順で進みます。民間の金融機関から借りている場合の細かな手順は、借入先や保証会社に確認してください。
- 任意売却の申出と仲介業者の選定「任意売却に関する申出書」を提出します。仲介業者は原則として所有者自身が選びます。
- 物件調査・価格査定と売出価格の確認仲介業者が査定書を提出し、債権者が確認した売出価格が通知されます。
- 媒介契約と販売活動専任媒介契約または専属専任媒介契約を結び、販売状況を定期的に報告します。
- 抵当権抹消の審査と売買契約購入希望者が現れたら抵当権抹消に応じられるか審査され、承諾後に売買契約を結びます。
- 決済・引渡し代金決済と同時に抵当権抹消の書類が渡され、家を引き渡します。
任意売却にも期限と条件がある
任意売却は、いつまでも待ってもらえるわけではありません。機構の任意売却パンフレットでは、初回の媒介契約から6か月を過ぎても購入希望者が現れない場合などに、任意売却を断念して競売手続に着手することがあるとしています。
競売の手続きが進んだあとも、取り下げてもらえれば任意売却に切り替えられますが、民事執行法では入札(買受けの申出)があった後の取下げには最高価で入札した人などの同意が必要とされています。裁判所の不動産競売物件情報サイト(BIT)も、確実に取り下げるには、申し立てた債権者が開札期日の前日までに取下書を提出する必要があると説明しています。任意売却を選ぶなら、競売の入札が始まる前に動くのが現実的です。
機構の場合、全額の繰上償還請求を受けていない人が任意売却を申し出ると、月々の返済を続ける権利を放棄した意思表示となり、残高全額の返済を求められます。一部のフラット35では、これにより機構団信の保障が終了すると案内されています。申し出る前に、団信の扱いも確認してください。
売ったあとも住みたいならリースバックの条件に注意
家を売ったあと、買主に賃料を払って住み続けるリースバックという方法もあります。ただし、ローンが売却価格を上回るなら抵当権を外すために債権者の同意が必要な点は任意売却と同じです。国土交通省の住宅のリースバックに関するガイドブックは、定期借家契約では期間満了で契約が終わり、貸主が再契約を拒めば退去が必要になると注意を促しています。同省が令和2年度に事業者39社に行った調査では、買取価格が周辺相場の「7割以下」という回答が50%でした。売却価格・賃料・契約期間を、通常の売却や任意売却と比べてから決めてください。
滞納前なら売却してローンを完済する選択肢
家の売却価格が、ローン残高と売却費用の合計を上回るなら、通常の売却でローンを完済して抜け出せます。信用情報に延滞が残る前に動けるのが最大の利点です。
任意売却は「売っても返しきれない」場合の手段です。一方で、購入から年数が経ってローン残高が減っている家や、地価が上がった地域の家なら、売却代金でローンを全額返せる可能性があります。この場合は債権者の同意を取りつける必要もなく、自分で売り方と時期を決められます。
売却価格がローン残高を上回るかを先に確かめる
家を売るときは、買主に引き渡す前に抵当権を抹消する必要があり、そのためにはローンの完済が前提になります。まず返済予定表で現在の残高を確認し、査定で売却価格の目安をつかみましょう。
査定額が残高を少し下回る程度なら、預貯金で差額を埋めて完済する方法もあります。残高が売却価格を大きく上回る場合の考え方は、オーバーローンでの売却を解説した記事も参考にしてください。
売却にかかる費用と手残りの計算
売却代金がそのまま手元に残るわけではありません。主な費用は仲介手数料で、上限は売買価格が400万円を超える部分について「価格×3%+6万円」に消費税を加えた額と定められています。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
ローン残高2,300万円の家を2,600万円で売った場合
- 仲介手数料の上限:(2,600万円×3%+6万円)×1.1=92万4,000円
- 抵当権抹消の登録免許税:土地と建物の2個×1,000円=2,000円
- 手残り:2,600万円-92万4,000円-2,000円-2,300万円=約207万円
実際には、司法書士への報酬、売買契約書の印紙税、金融機関の一括返済手数料なども差し引かれます。これらを含めてプラスになるかを、査定の段階で確認しておきましょう。
早く確実に手放したい場合は、不動産会社による買取も選択肢です。仲介より価格は下がる傾向がありますが、買主を探す期間が不要なため、返済が苦しい時期を長引かせずに済みます。
売却後の税金と、売却損が出たときの特例
マイホームを売って利益が出ても、居住用財産の3,000万円特別控除を使えば、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円を差し引けます。適用には確定申告が必要です。所有期間による税率の違いは短期譲渡所得の記事で詳しく解説しています。
反対に、ローン残高を下回る価格で売って損失が出た場合は、特定居住用財産の譲渡損失の特例で、給与など他の所得と損益通算し、控除しきれない分を翌年以後3年間繰り越せる場合があります。
- 令和9年12月31日までの売却であること
- 売った年の1月1日時点で、家屋と敷地の所有期間がともに5年を超えていること
- 売買契約日の前日に、償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること
- 損益通算できる限度は「契約日前日のローン残高-売却価額」まで
返済も売却も難しいときの個人再生・自己破産
住宅ローン以外の借金も重なっている場合は、弁護士に債務整理を相談します。個人再生なら、住宅ローンは払い続けて家を残しながら他の借金を減らせる可能性があります。
住宅金融支援機構も、返済方法を変えても他の返済を抱えて継続が難しい場合は、個人版民事再生(個人再生)について弁護士など法律の専門家に相談するよう案内しています。債務整理は裁判所が関わる手続きなので、家計の状況を書類で示せるよう準備しておきましょう。
家を残せる可能性がある個人再生
個人再生には、住宅ローンを従来どおり(または返済期間を延ばして)払い続けることを再生計画に定める住宅資金特別条項があります。住宅ローン以外の借金は圧縮して返済し、家は手元に残すという使い方ができます。
ただし対象となる「住宅」は、本人が所有し、床面積の2分の1以上を自分の住まいとして使っている建物に限られます。住宅に住宅ローン以外の抵当権が付いている場合は、この条項を使えません。
保証会社が代位弁済した後でも、代位弁済の日から6か月以内に個人再生を申し立てれば、住宅資金特別条項を定めることができます(民事再生法198条2項)。この期間を過ぎると家を残す手段が大きく狭まるため、代位弁済の通知が届いたら早急に弁護士へ相談してください。
自己破産と法テラスの無料相談
自己破産は、裁判所に免責を認めてもらうことで借金の返済義務をなくす手続きです。家などの財産は原則として処分されて債権者への配当にあてられ、未払いの税金などは免責されても残ります。
弁護士費用が心配な場合は、法テラス(日本司法支援センター)を利用できます。法テラスの資料によると、資力基準などの要件を満たせば、1つの案件につき3回まで無料で法律相談を受けられ、弁護士費用を立て替える制度もあります。
住宅ローンが払えないときにやってはいけないこと
放置・借金での穴埋め・財産隠しは、いずれも状況を悪化させます。特に家族への名義変更や特定の人だけへの返済は、自己破産で免責されない原因になり得ます。
返済に追い詰められると、目の前の支払いをしのぐことや、家だけは家族に残すことを優先したくなります。しかしその場しのぎの行動が、後で使えるはずだった手段を失わせることがあります。代表的な5つをまとめます。
督促を無視する・借金で穴埋めする
督促の電話や書面を無視しても、手続きは止まりません。連絡が取れない債務者とは条件変更の話し合いもできず、一括返済の請求や競売へと進むだけです。延滞した分には約定の遅延損害金もかかります。
カードローンや消費者金融で借りて住宅ローンを払うのも避けてください。返済先が増え、より高い金利の借金が積み上がるうえ、最終的に債務整理が必要になったとき、整理すべき借金が膨らんでいます。
家族への名義変更や特定の人だけへの返済
「家を取られる前に家族の名義にしておこう」という考えは危険です。破産法は、債権者を害する目的で財産を隠したり不利益に処分したりした場合や、特定の債権者にだけ特別な利益を与える目的で返済した場合を、免責不許可事由(破産法252条1項)として定めています。
また民法では、債務者が債権者を害することを知ってした行為について、債権者が裁判所に取消しを請求できるとされています(詐害行為取消請求)。親族からの借金だけを先に返す、家を安く親族に売るといった行動も、後で問題になり得ます。
債権者の確認を取らずに売り出す
ローン残高を下回る価格で売るには、債権者に抵当権の抹消を認めてもらう必要があります。機構は、確認していない価格で売り出して購入希望者を見つけても、抵当権抹消に応じられない場合があるとしています。
任意売却を勧める業者に依頼する場合も、費用の内訳は書面で確認しましょう。宅建業者が受け取れる仲介手数料には法令で上限があり、機構が売却代金からの控除を認める費用は仲介手数料や抹消登記費用などとされています。
住宅ローンが払えないときは、滞納前に借入先へ相談し、返済を続けるなら条件変更、続けられないなら売却価格とローン残高を比べて任意売却か通常の売却かを選びます。隠したり放置したりせず、早く動くほど選べる手段が多く残ります。
よくある質問
住宅ローンを1回滞納しただけで競売になりますか?
1回遅れただけですぐに競売になるわけではありません。ただし督促を放置して滞納が続くと、分割で返す権利を失って一括返済を求められ、競売の申立てへと進みます。各段階の時期は契約や金融機関によって異なるため、遅れそうだと分かった時点で借入先に連絡してください。
フラット35の返済方法変更に手数料はかかりますか?
住宅金融支援機構の返済方法変更は、返済特例・中ゆとり・ボーナス返済の見直しのいずれも手数料不要です。ただし審査があり、返済期間を延ばすと利息が増えて総返済額は増えます。申請は返済中の金融機関を通じて行います。
任意売却したあとに残ったローンはどうなりますか?
売却代金で返しきれなかった分の返済義務は、破産で免責を受けた場合を除いて残ります。
住宅金融支援機構は、任意売却後の返済計画について、生活状況などを踏まえて本人と一緒に返済可能な金額を決めると案内しています。
競売や任意売却で家を売ったら税金はかかりますか?
資力を失い債務の返済が著しく困難な場合に、競売などの強制換価手続で資産を譲渡した所得は、所得税が課税されません。競売が避けられない状況での売却で、代金の全部を債務の返済に充てた場合も同様です。該当するかは税務署や税理士に確認してください。
この記事のまとめ
- 住宅ローンが払えないと感じたら、滞納する前に借入先の金融機関へ相談する
- 条件変更で毎月の返済額は下がるが、総返済額は増える。収入が戻る見通しが前提
- 機構のローンは返済期間を最長15年延長、条件により元金据置を最長3年。手数料不要
- 滞納を放置すると一括請求・代位弁済・競売へ進み、売れても残債は残る
- 続けられないなら任意売却、売却価格が残高を上回るなら通常の売却で完済する
- 名義変更・財産隠し・特定の人だけへの返済は、免責不許可事由になり得る
どの道を選ぶにしても、出発点は「今の家がいくらで売れるか」と「ローン残高」を比べることです。まずは現在の価格を知ることから始めてください。