不動産査定の方法|机上・訪問・買取査定の違いと査定額の決まり方

不動産査定の3つの方法と査定額の決まり方を解説する記事のイメージ

家を売るかどうか迷っていて、まず「いくらで売れるのか」を知りたい。けれど、不動産査定には机上査定・訪問査定・買取査定といった種類があり、会社によって出てくる金額もばらばら——どれを信じればいいのか分からず、手が止まっている方は多いはずです。

結論から言うと、査定額は「この価格なら売れそうだ」という不動産会社の意見であって、売れることが約束された価格ではありません。中古住宅の査定額は、主に近くで実際に売れた事例と比べる「取引事例比較法」で決まり、不動産会社にはその根拠を示す法律上の義務があります。

だからこそ、査定は金額の高さではなく「根拠の確かさ」で比べるのが正解です。この記事では、査定の種類の選び方から、査定額と売却価格がズレる理由、一括査定の使い方までを順に整理します。

この記事を読むとわかること

  • 机上査定・訪問査定・買取査定の違いと、目的別の使い分け
  • 取引事例比較法・原価法・収益還元法で査定額が決まる仕組み
  • 査定額・売出価格・成約価格・路線価などの「価格」の違い
  • 査定額と実際の売却価格がズレる理由と、根拠の確かめ方
  • 一括査定で複数社を比べるときの手順と注意点

この記事の結論

  1. 不動産査定は机上査定(データのみ)・訪問査定(現地確認あり)・買取査定(業者が自ら買う価格)の3種類。相場をつかむなら机上、売り出す前には訪問査定が必要です。
  2. 査定額の中心は取引事例比較法。近隣の成約事例に事情補正・時点修正をかけて比べます。戸建ての建物は原価法、投資用物件は収益還元法も使われます。
  3. 宅建業法34条の2第2項により、不動産会社は査定額(意見)の根拠を明らかにする義務があり、そのための査定費用は依頼者に請求できません。
  4. 査定額は売れる保証のある価格ではありません。専任媒介の期間は最長3か月なので、その間に売れる価格かどうかで判断します。
  5. 一括査定は、出てきた金額の最高値ではなく根拠と販売計画で比べると、査定額と売却価格のズレを小さくできます。

不動産査定の3つの方法|机上査定・訪問査定・買取査定の違い

結論

相場をざっくり知りたい段階は机上査定、実際に売り出す前は訪問査定、早く確実に手放したいなら買取査定。目的に合わせて使い分けるのが基本です。

「不動産査定」とひと口に言っても、どこまで調べて金額を出すかによって種類が分かれます。仲介で売る前提の査定(机上査定・訪問査定)と、不動産会社が自分で買い取る前提の査定(買取査定)では、そもそも出てくる金額の意味が違います。

まずは3つの違いを表で押さえ、そのうえで1つずつ中身を見ていきます。

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項目 机上査定 訪問査定 買取査定
金額の意味 仲介で売れそうな価格の概算 仲介で売れそうな価格 不動産会社が自ら買う価格
調べ方 物件情報と取引事例などのデータ データ+現地確認+役所・法務局の調査 現地確認+再販までの費用の見積り
立ち会い 不要 必要 必要(現況確認)
精度 建物の状態などが反映されない 個別の事情まで反映される 条件が合えばその金額で買主が決まる
向いている人 売るか迷っている、相場だけ知りたい 売り出す時期や価格を決めたい 早く現金化したい、売りにくい物件

※買取査定の進め方は会社によって異なり、書類だけで概算を出す場合もあります。

机上査定(簡易査定)はデータだけで出す概算

机上査定は、所在地・面積・築年数・間取りなどの物件情報をもとに、近隣の取引事例や公的な価格データと比べて金額を出す方法です。現地を見ないため、早く・気軽に依頼できるのが利点です。

その代わり、建物の傷み具合・日当たり・眺望・リフォームの有無といった個別の事情は反映されません。同じマンションの同じ広さの部屋でも、室内の状態で売れる価格は変わるため、机上査定の数字は「この地域ならこのくらい」という目安にとどめておきます。

売るかどうかをまだ決めていない段階、住み替えの資金計画をざっくり立てたい段階では、机上査定で十分です。逆に、机上査定の金額だけで売出価格や住み替え先の予算を固めるのは避けてください。

訪問査定は現地と書類を確認して精度を上げる

訪問査定では、担当者が実際に物件を見て、建物の状態や周辺環境を確認します。あわせて、登記の内容、道路との接し方、建築時の書類、法令上の制限などを役所や法務局で確認することもあります。

この調査で、机上査定では分からない「価格を下げる要因」が見つかることがあります。たとえば、道路に2m以上接しておらず建て替えができない土地は、周辺相場から大きく下がります(詳しくは再建築不可物件の売却方法で解説しています)。

  • 建物の傷み・雨漏り・設備の故障の有無
  • 日当たり・眺望・騒音など、図面では分からない住み心地
  • 道路との接し方(接道)と境界がはっきりしているか
  • 増築部分が登記されているか、建築時の検査済証があるか
  • マンションなら管理状況・修繕積立金の水準

買取査定は「不動産会社が自ら買う価格」

机上査定と訪問査定は、一般の買主を探す「仲介」で売れそうな価格の予想です。これに対して買取査定は、不動産会社自身が買主になる場合の購入価格の提示です。条件が合えばその金額で売却が決まるため、「いつ売れるか分からない」という不確実さがありません。

一方で、不動産会社は買い取った物件を改修して転売するため、その費用と利益を差し引いた金額になります。買取査定額が仲介の査定額より低くなるのはこのためで、理由と向いているケースは後半の「買取査定を選んだほうがいいケース」で詳しく説明します。

この項目のまとめ
  • 机上査定は相場の目安、訪問査定は売り出し前の精度の高い予想
  • 買取査定は「その価格で買う」という提示で、仲介の査定とは意味が違う

査定額の決まり方|取引事例比較法・原価法・収益還元法

結論

査定額の土台は、国の「不動産鑑定評価基準」にもある3つの考え方です。似た取引が多い住宅では取引事例比較法が中心で、戸建ての建物は原価法、賃貸物件は収益還元法で補います。

不動産会社の査定は、不動産鑑定士が行う正式な「鑑定評価」とは別物ですが、価格の考え方は共通しています。国土交通省の不動産鑑定評価基準は、価格を求める手法として原価法・取引事例比較法・収益還元法の3つを定めています。

用語の補足:不動産鑑定評価

不動産鑑定士が「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づいて行う価格の判定です。不動産会社の査定書は鑑定評価書ではなく、書面で渡す場合はその旨を明記するよう国土交通省の通達で求められています。

中心は取引事例比較法|近くで売れた事例と比べる

取引事例比較法は、多数の取引事例を集めて適切な事例を選び、その価格に事情補正と時点修正をかけたうえで、地域や個別の条件の違いを比べて価格を求める手法です(不動産鑑定評価基準)。こうして出した価格を「比準価格」と呼びます。

事情補正とは、売り急ぎや買い進みなど特殊な事情で相場から外れた取引を補正すること、時点修正とは、事例の取引時点から今までの価格の動きを反映することです。そのうえで、駅からの距離、階数、向き、広さ、道路付けなどの違いを点数化して調整します。

  1. 事例を集める近隣・同じマンションの成約事例
  2. 事情補正売り急ぎなど特殊な取引を補正
  3. 時点修正取引時点から今までの値動き
  4. 条件を比べる駅距離・階数・向き・広さなど
  5. 比準価格これが査定額の土台になる
図:取引事例比較法で査定額が決まるまでの流れ
具体例

同じマンションの別の部屋が売れていた場合

  • 前提(仮の数字):同じマンションの70㎡の部屋が最近3,500万円で成約。査定する部屋は63㎡で、階数・向きなどの条件はほぼ同じ
  • 1㎡あたり:3,500万円 ÷ 70㎡ = 50万円
  • → 63㎡ × 50万円 = 約3,150万円が比較の出発点

ここから「査定する部屋は角部屋」「室内の傷みが大きい」といった違いを上下に調整して査定額になります。成約事例が古ければ、その後の値動きも反映します。

戸建ての建物は原価法|築年数だけで決めない流れ

原価法は、今その建物を建て直したらいくらかかるか(再調達原価)を求め、そこから古くなった分を差し引く(減価修正)手法です(不動産鑑定評価基準)。中古戸建ての建物部分の評価には、この原価法の考え方が使われています。

以前の中古戸建ての取引では、建物の状態にかかわらず築20〜25年程度で建物の市場価値がゼロとされる慣行がありました。国土交通省は2014年3月に「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」をまとめ、基礎・躯体と内外装・設備を分けて評価し、適切なリフォームをした分は価値に反映する考え方を示しています。

POINT

リフォーム・点検の記録は査定前に用意する

  • 指針の考え方は、不動産会社が査定に使う既存住宅の価格査定マニュアルにも2015年7月に反映されています
  • 外壁塗装・屋根・水回りの交換などの時期と内容が分かる書類があれば、訪問査定で必ず見せてください

投資用物件は収益還元法|家賃から逆算する

収益還元法は、その不動産が将来生み出す収益から価格を求める手法で、賃貸用の不動産で特に有効とされています(不動産鑑定評価基準)。もっとも単純な「直接還元法」では、1年間の純収益(家賃収入から管理費・修繕費・税金などを引いた額)を還元利回りで割ります。

具体例

年間の純収益60万円の投資用マンションの場合

  • 前提(仮の数字):家賃などの年間収入から経費を引いた純収益が60万円。周辺の類似物件から見た還元利回りを5%とする
  • → 60万円 ÷ 5% = 1,200万円
  • 還元利回りが6%なら 60万円 ÷ 6% = 1,000万円

利回りが1ポイント違うだけで価格は200万円変わります。投資用物件の査定では、家賃の水準と、どの利回りを使ったかを必ず確認してください。

賃貸中のマンションを売る場合は、空室にして自宅用として売るか、入居者付きのまま投資用として売るかで、使われる手法も査定額も変わります。どちらの前提の査定なのかを会社ごとにそろえて比べることが大切です。

この項目のまとめ
  • 住宅の査定は、近隣の成約事例と比べる取引事例比較法が中心
  • 戸建ての建物は原価法、賃貸物件は収益還元法で補う
  • リフォーム履歴や家賃の資料は、査定額を左右する根拠になる

査定額・売出価格・成約価格・公的価格の違い

結論

査定額は「売れそうな価格」、売出価格は「広告に出す価格」、成約価格は「実際に売れた価格」です。路線価や固定資産税評価額は税金のための価格で、そのまま売却価格の目安にはなりません。

不動産の「価格」には目的の違う数字がいくつもあり、混同すると判断を誤ります。査定の結果を正しく読むために、それぞれの位置づけを整理しておきます。

売出価格と成約価格は別物

査定額をもとに、売主と不動産会社が相談して決めるのが売出価格です。値下げ交渉を見込んで査定額より少し高めに設定することもあれば、早く売りたい事情があって査定額どおりにすることもあります。

実際に買主と合意した価格が成約価格です。ポータルサイトに並んでいるのは売出価格なので、近所の売り出し中の物件の価格を見て「うちもこのくらい」と考えるのは危険です。売れずに値下げを繰り返している物件も含まれているためです。

注意

査定の根拠として見るべきなのは、売出価格ではなく成約価格の事例です。不動産会社に「この査定額の根拠は、売り出し中の物件ですか、成約した事例ですか」と確認してください。

地価公示・路線価・固定資産税評価額は査定額ではない

国や自治体が公表する「公的価格」は、取引の指標や税金の計算のために作られた数字です。特に路線価と固定資産税評価額は、もともと時価より低めに設定されています。

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価格 決める機関 目的 時価との関係
地価公示 国土交通省(土地鑑定委員会) 一般の土地取引の指標 毎年1月1日時点の標準地の「正常な価格」。3月下旬に公示
路線価 国税庁 相続税・贈与税の計算 地価公示価格などをもとに算定した価格の80%で評価
固定資産税評価額 市町村 固定資産税などの計算 宅地は地価公示価格等の7割を目途に評価
査定額 不動産会社 売出価格を決める参考 成約事例をもとにした「売れそうな価格」

※出典:国土交通省(地価公示)、国税庁(路線価の評価方法)、総務省(固定資産税の概要)。

たとえば固定資産税の納税通知書に書かれた土地の評価額は、7割を目途とした評価なので、それを売却価格と考えると低く見積もりすぎることになります。逆に、相場が下がっている地域では公的価格の改定が追いつかないこともあり、公的価格はあくまで参考として扱います。

自分で相場を調べるなら「不動産情報ライブラリ」

査定を依頼する前に、自分でも相場を確認しておくと、出てきた査定額が妥当か判断しやすくなります。国土交通省の不動産情報ライブラリでは、実際の取引価格や成約価格の情報を地図上で調べられます。

同じ画面で地価公示・都道府県地価調査のほか、洪水浸水想定区域などの防災情報、用途地域などの都市計画情報も重ねて表示できます。買主が気にするポイントを先に把握しておけば、訪問査定で担当者の説明を聞くときにも役立ちます。

  • 同じ駅・同じ町名で、広さと築年数が近い事例を3件以上探す
  • 1㎡あたりの単価に直して比べる
  • 取引時期が古い事例は、その後の値動きを考慮する
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査定額と売却価格がズレる理由と、根拠の確かめ方

結論

査定額は不動産会社の「意見」なので、実際の売却価格とはズレることがあります。金額の高さではなく、根拠を説明できるかどうかで会社を選んでください。

査定額と売却価格がズレる原因は、主に「相場そのものが動く」「物件の弱点が後から分かる」「査定額が意図的に高く出されている」の3つです。前の2つは避けにくいものですが、3つ目は売主側の確認で防げます。

査定額は「意見」であり、売れる保証ではない

宅地建物取引業法34条の2第2項は、不動産会社が売買すべき価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。法律上も、査定額は不動産会社の「意見」という位置づけです。

国土交通省の宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方は、根拠として価格査定マニュアルや同種の取引事例など合理的な説明がつくものを挙げています。根拠は口頭でも書面でもよく、必ずしも依頼者の納得を得る必要はないものの、合理的でなければならないとされています。

用語の補足:価格査定マニュアル

公益財団法人不動産流通推進センターが提供する査定ツールです。築年数や仕様などの物件情報を入力すると査定額を算出でき、不動産会社が価格の根拠を示す手法として開発されました。

高すぎる査定額に潜む「売れ残り」のリスク

複数の会社に査定を頼むと、1社だけ飛び抜けて高い金額を出してくることがあります。媒介契約を取りたいがために高めの金額を示し、売り出してから値下げを提案するという流れになると、時間だけが過ぎてしまいます。

専任媒介契約と専属専任媒介契約の有効期間は、法律で3か月を超えられないと決まっています(宅建業法34条の2第3項)。この3か月で売れる価格かどうかが、査定額の現実味を測る一つの物差しです。

  1. 媒介契約を結ぶ契約日の翌日から数え始める
  2. 5日・7日以内専属専任は5日、専任は7日以内(休業日を除く)に指定流通機構(レインズ)へ登録
  3. 1週間・2週間ごと専属専任は1週間に1回以上、専任は2週間に1回以上、販売状況を報告
  4. 3か月有効期間の上限。更新は売主の申出が必要
図:専任媒介・専属専任媒介を結んでからの期限

売れない期間が長くなると、ポータルサイトで「ずっと売れ残っている物件」として見られ、かえって値下げ幅が大きくなることもあります。高い査定額を選ぶなら、その価格で売れなかったときの見直し時期と下限の価格を、最初に担当者と決めておきましょう。

査定の根拠を確かめる質問リスト

根拠の明示は不動産会社の義務なので、遠慮せずに聞いてかまいません。次の質問に具体的に答えられる担当者なら、査定額の信頼性は高いと考えられます。

  • 比較に使った成約事例はどれか(所在地・広さ・築年数・成約時期)
  • 事例と比べて、どの条件でいくら上げ下げしたか
  • この価格で売れると考える期間と、その間の販売活動の内容
  • 売れなかった場合、いつ・いくらまで価格を見直す想定か
  • 建物の状態や法令上の制限で、価格を下げる要因はあるか
結論

査定額は高ければよいものではありません。成約事例にもとづく根拠と、売れなかったときの見直し計画まで説明できる会社の査定額が、実際の売却価格にいちばん近くなります。

一括査定の使い方|複数社の査定を比べる手順

結論

一括査定は、1回の入力で複数の会社の査定を比べられる仕組みです。物件情報を正確に入れ、根拠をそろえて比べることで、査定額のばらつきを判断材料に変えられます。

1社だけの査定では、その金額が高いのか低いのかを判断できません。複数社の査定を並べると、地域の相場観の幅や、会社ごとの得意な物件の違いが見えてきます。

依頼前にそろえておく情報と書類

机上査定の精度は、入力する物件情報の正確さで決まります。うろ覚えの面積や築年数で依頼すると、会社ごとに違う前提で計算され、比べる意味がなくなってしまいます。

  • 登記事項証明書(土地・建物の面積、所有者、権利関係)
  • 購入時の売買契約書・重要事項説明書・図面
  • 固定資産税の納税通知書(評価額と税額)
  • 建築確認済証・検査済証(戸建ての場合)
  • リフォームや修繕の記録、マンションなら管理規約と修繕積立金の額
  • 住宅ローンの残高が分かる書類

ローンの残高は、査定額との比較で「売ったお金でローンを完済できるか」を判断するのに必要です。売却で利益が出る場合の税金も手残りに影響するので、所有期間による税率の違いは短期譲渡所得の記事で確認しておくと安心です。

依頼から媒介契約までの流れ

  1. 物件情報を入力して査定を依頼する所在地・種類・面積・築年数などを入れます。売るか迷っている段階なら、その旨を伝えておきます。
  2. 机上査定の結果を受け取る金額だけでなく、根拠にした事例や査定の前提も確認します。
  3. 2〜3社に絞って訪問査定を受ける同じ書類を見せ、同じ質問をして、説明の具体性を比べます。
  4. 売出価格と販売計画を決める査定額・売り出しから成約までの見込み期間・見直し時期をそろえて比較します。
  5. 媒介契約を結ぶ(または買取を選ぶ)一般・専任・専属専任のどれにするかを決めます。仲介が難しければ買取査定の金額と比べます。

査定を依頼しただけで、売却や媒介契約の義務が生じるわけではありません。媒介契約を結ぶと、不動産会社は契約内容を書いた書面を遅滞なく交付する義務があるので(宅建業法34条の2第1項)、契約の種類・期間・報酬を書面で確認してから署名しましょう。

査定結果は「最高値」ではなく「根拠」で比べる

同じ物件でも、査定額は会社によって差が出ることがあります。差が出たときは、どの事例を使ったか、建物をどう評価したか、売り出しから成約までの期間をどう見込んだかの違いを確かめます。

POINT

一括査定の結果の読み方

  • 最高値と最安値は理由を聞き、説明が具体的でなければ参考程度にとどめる
  • 複数社の金額が近い価格帯が、その地域で現実的な相場の目安になる
  • 机上査定と訪問査定で金額が大きく変わった会社には、変わった理由を確認する

売却ナビットでは、申し込みのあと売却ナビットが窓口となって不動産会社との相談・交渉を進めるため、査定を依頼した会社から次々に営業電話がかかってくる心配がありません。売るかどうか決めていない段階でも、相場を知る目的で利用できます。

買取査定を選んだほうがいいケース

結論

買取査定の金額は仲介より低くなりやすい一方、売れる時期と金額が早く確定します。仲介では買主が見つかりにくい物件ほど、買取査定もあわせて取る価値があります。

仲介と買取は、どちらが得かではなく「価格」と「確実さ・早さ」のどちらを優先するかの選択です。仲介の査定額が出たら、その価格で本当に売れるのか、売れるまでにどれだけかかりそうかもあわせて考えます。

買取査定額が仲介の査定額より低くなる理由

買い取った不動産会社は、改修して再び売り出すまでの間に、リフォーム費用・税金・販売経費を負担し、売れ残るリスクも引き受けます。その費用とリスクの分が差し引かれるため、買取査定額は仲介の査定額より低くなるのが通常です。

ただし、仲介で売るときにかかる費用が買取ではかからない場合があるので、比べるのは「査定額」ではなく「手元に残る金額」です。代表的なのが仲介手数料で、不動産会社が自ら買主になる取引には媒介がないため、媒介報酬は発生しません。

具体例

3,000万円で仲介で売れた場合の仲介手数料の上限

  • 200万円以下の部分:200万円 × 5% = 10万円
  • 200万円超400万円以下の部分:200万円 × 4% = 8万円
  • 400万円超の部分:2,600万円 × 3% = 78万円
  • → 合計96万円、消費税10%込みで105万6,000円が上限

仲介と買取の金額差を比べるときは、この手数料や、仲介で売るために必要になる修繕費・売れるまでの固定資産税なども含めて手残りで比べます。

仲介手数料の上限は、国土交通大臣の告示で決められています。2024年7月からは、売買価格800万円以下の「低廉な空家等」について、媒介に必要な費用を考慮して30万円の1.1倍(33万円)まで受け取れる特例が設けられています。

仲介で売りにくい物件は買取査定もあわせて取る

仲介の査定額は「一般の買主が見つかれば」という前提の価格です。買主の住宅ローンが通りにくい物件や、建て替えができない土地などは、査定額を出せても買主が現れず、何度も値下げすることになりがちです。

  • 接道の条件を満たさず建て替えができない(再建築不可)
  • 昭和57年(1982年)より前に建てられ、耐震基準に適合する証明書類がない家
  • 増築部分が未登記、検査済証がないなど書類に不備がある
  • 相続した空き家で、遠方に住んでいて管理や内覧の対応が難しい
  • 住み替えの期限や資金の都合で、売れる時期を確定させたい

たとえば昭和57年1月1日より前に建てられた家は、耐震基準に適合することを示す書類がないと、買主が中古住宅の住宅ローン控除を受けられません。仲介で敬遠されやすい理由の一つです(旧耐震基準の家の売却で詳しく解説しています)。こうした物件は、仲介の査定と買取査定を同時に取り、両方の手残りと期間を並べて決めるのが現実的です。

仲介と買取のメリット・デメリット

買取を選ぶときのメリットとデメリットを整理すると、次のとおりです。仲介はこの裏返しで、価格は高くなりやすい一方、売れる時期と金額は買主が見つかるまで確定しません。

メリット

  • 買主を探す期間がなく、売れる時期と金額が早く決まる
  • 不動産会社が直接買う取引には仲介手数料がかからない
  • 内覧対応や広告が不要で、近所に知られにくい
  • 仲介で敬遠されやすい物件でも買い手がつく可能性がある

デメリット

  • 再販の費用とリスクの分、仲介の査定額より低くなりやすい
  • 買取価格の考え方は会社ごとの差が大きく、1社では判断しにくい
  • 買い取れる地域や物件の種類が会社によって限られる
この項目のまとめ
  • 買取査定額は低めでも、仲介手数料や売れるまでの費用を含めた手残りで比べる
  • 再建築不可・旧耐震・書類不備などの物件は、仲介と買取の査定を同時に取る

よくある質問

不動産査定にお金はかかりますか?

売却の媒介を前提とした不動産会社の査定では、査定費用を請求されないのが原則です。国土交通省の通達で、査定額の根拠を示すことは法律上の義務なので、そのための査定にかかった費用は依頼者に請求できないとされています。不動産鑑定士による鑑定評価は、これとは別のものです。

いちばん高い査定額を出した会社に任せるべきですか?

金額だけで選ぶのはおすすめしません。査定額はあくまで不動産会社の意見で、売れることが保証された価格ではないからです。

比較に使った成約事例、売れなかったときの見直し時期と価格まで具体的に説明できる会社を選ぶと、査定額と実際の売却価格のズレが小さくなります。

机上査定だけで売出価格を決めてもいいですか?

机上査定は、建物の傷み・日当たり・接道や境界の状況などが反映されない概算です。相場をつかむには十分ですが、売り出す前には訪問査定を受け、現地と書類を確認したうえで売出価格を決めてください。訪問査定では登記や法令上の制限も調べるため、机上査定では見えなかった減額の要因が分かることがあります。

査定を依頼したら、必ず売らないといけませんか?

査定を依頼しただけで、売却する義務や媒介契約を結ぶ義務は生じません。売却を依頼する段階になって初めて媒介契約を結び、不動産会社から契約内容を書いた書面を受け取ります。売るか迷っている段階で相場を知るために査定を使うことは、問題ありません。

この記事のまとめ

  • 不動産査定は机上・訪問・買取の3種類。相場は机上、売り出し前は訪問査定で確かめる
  • 査定額は主に取引事例比較法で決まり、戸建ての建物は原価法、賃貸物件は収益還元法で補う
  • 路線価(地価公示等の80%)や固定資産税評価額(7割目途)は売却価格の目安にならない
  • 査定額は「意見」。根拠の明示は不動産会社の義務なので、成約事例と見直し計画を確認する
  • 一括査定は最高値ではなく根拠で比べ、売りにくい物件は買取査定の手残りとも比べる

売るかどうかを決めるのは、正しい価格を知ってからでも遅くありません。まずは複数の査定を並べて、自分の不動産の現在の価格を確かめることから始めてください。

この記事を書いた人

売却ナビット編集部(運営:合同会社GREA)
不動産の一括査定サービス「売却ナビット」を運営。相続・老朽化・投資物件など、売りにくい不動産の売却相談を扱っています。
〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル6階/TEL 03-5615-9793(10:00〜18:00 年中無休・年末年始を除く)
記事内の税制・法令に関する記述は、国税庁・法務省・国土交通省などの公表情報をもとに作成しています。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください。

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